「夢の油」と呼ばれたポリ塩化ビフェニルの優れた性質と危険性 | PCB処理 完全攻略ガイド
特集記事
「夢の油」と呼ばれたポリ塩化ビフェニルの優れた性質と危険性
公開:2024.02.22 更新:2024.03.05ポリ塩化ビフェニル(PCB)は、かつてその高い絶縁性や化学的安定性から「夢の油」として称賛されましたが、その後、環境や生物に与える深刻な危険性が明らかになりました。PCBは生物濃縮現象により生態系に蓄積し、食物連鎖を通じて伝播するため、魚や野生動物に影響を及ぼす一方、人体にもさまざまな健康被害をもたらすことが指摘されています。
目次
PCBは夢の油?ポリ塩化ビフェニルの優れた性質
PCB(ポリ塩素化ビフェニル)は、絶縁性が高く、酸やアルカリに強く、化学的に安定しているため、かつては「夢の油」と呼ばれていました。
◇夢の油と呼ばれたPCBの優れた性質
PCB(ポリ塩化ビフェニル)は、化学的に非常に安定しており、その性質からかつては産業界で「夢の化学物質」と呼ばれました。PCBは無色透明であり、外見は油のようですが、化学的に安定しています。酸やアルカリと接触しても変化せず、耐熱性が高く、電気を通さない絶縁性、非水溶性など、優れた特性を持っています。
このような性質から、PCBは工業用オイルとして広く利用されてきました。空気中でも酸化が進みにくく、加熱や冷却しても変化が少ないため、機械部品の潤滑油や冷却剤として長期間使用されました。また、不燃性を持つため、通常の油とは異なり、火災の原因になりにくいという特徴もあります。
さらに、PCBは各種の薬品に対しても耐久性を示し、特に酸やアルカリに侵されず、電気を通さないため、絶縁材としても利用されました。また、水にほとんど溶けないため、他の油や有機溶媒との親和性が高く、化学樹脂との混合や加工にも適していました。
しかし、その後、PCBが環境や人体に与える影響が明らかになり、多くの国で規制がかけられ、使用が制限されました。今日では、PCBの代替品が開発され、環境への負荷を軽減しつつ、同様の用途に利用されています。
◇様々な製品に使用されていたPCB
PCBを含む代表的な電気機器である高圧トランス、高圧コンデンサ、および安定器です。トランスは電気の電圧を変える装置であり、コンデンサは電気を一時的に蓄えるなどの役割を果たします。
国内では、主に電気機器用の絶縁油や各種工業での加熱・冷却用の熱媒体、感圧複写紙などに利用されていました。
また、昭和47年8月以前に製造された業用・施設用蛍光灯などには、PCBが含まれているものもありますが、家庭用の蛍光灯には使用されていません。安定器の中にもPCBが入っているものがあり、これらは発電所、地下鉄車両、船舶、鉱山、地下施設(トンネルや地下室)などで電気設備に利用されています。
PCBの危険性とは?生物濃縮による影響
画像出典先:フォトAC
PCB(ポリ塩化ビフェニル)は、その優れた特性からかつては広く利用されましたが、その安定性が逆に環境や生物に深刻な影響を与えることが明らかになりました。こうした影響について詳しく解説します。
◇PCBの生物濃縮による影響
PCBは環境中に放出されると、生物濃縮現象によって生物体内に蓄積されます。これが生態系に及ぼす影響は深刻で、特に食物連鎖を通じてPCBが伝播することが問題視されます。
1960年代に入り、欧米各地で魚の大量死や野生動物の繁殖力低下などが発覚しました。
当初はDDTやBHCなどの有機塩素系殺虫剤が原因ではないかと疑われていました。これらの殺虫剤は昆虫の神経系を麻痺させるもので、一時期大量に使用されましたが後になって分かったことは、有機塩素系殺虫剤は自然界で分解されにくく、環境中に蓄積してしまうことです。
この問題に疑問を持ったスウェーデンのヤンセン博士は、魚の大量死や異変が特定のパターンで現れ、食物連鎖を通じて伝播している可能性に気づきます。そこでオジロワシなど食物連鎖の最終段階の動物に焦点を当て、1966年にPCBの検出に成功しました。
実は、サケや川カマスの大量死もPCBが原因で、この結果、PCBの環境毒性が認識され、1970年代に入ると欧米や日本での使用や生産が禁止されるようになります。
◇PCBの人体に対する影響
PCBは脂肪に溶けやすく、その性質から食物連鎖を通じて生物の体内に蓄積しやすいため、人体に入るとさまざまな症状を引き起こします。中毒症状には目やに、爪や口腔粘膜の色素沈着などがあり、さらには座瘡様皮疹(塩素ニキビ)、爪の変形、まぶたや関節の腫れなどが報告されています。
また、PCBは分解が難しいため、大気や海を長距離移動し、極地などに到達することがあります。これにより、極地で生活するイヌイットの人々やアザラシ、クジラなどの体内にもPCBが蓄積し、広範囲に渡って重大な問題を引き起こします。
実は有害な夢の化学物質他にも
昭和時代、特に1970年代の高度成長期には、PCBの他にも大量に生産・消費された有害な化学物質が存在し、現在は産業廃棄物として扱われています。
◇アスベスト(石綿)
アスベスト(石綿)の主成分は珪酸、酸化マグネシウム、酸化鉄であり、有害な元素は含まれていないとされています。繊維が細かく(1本は髪の毛の1/5,000の直径)、浮遊しやすく、吸入されやすい特徴があり、密度が小さくて保湿性に優れているため、建築物の断熱材や保温材として一般的に使用されていました。
アスベストの危険性は、アスベスト鉱山で働く労働者が肺の病気になることが以前から知られていましたが、十分に認識されていませんでした。
アスベストが使用された建築物の壁や天井が剥離または傷つくと、細い繊維が外部に放出され、呼吸を通じて肺に侵入します。アスベストの繊維は頑丈で化学的に分解されにくいため肺に蓄積して、最終的には肺疾患や特殊な肺がんを引き起こすことがわかりました。
◇フロン
国内の半導体工場では、フロンを半導体の製造において洗浄に用いられていました。半導体は微細なホコリや不純物が存在すると不良品になりやすいため、高度な洗浄が必要ですが、通常の水には不純物が含まれているため、洗浄剤としては適していません。
しかし、多くの有機溶剤は可燃性であり、大量に使用する場合には危険が伴います。フロンは不純物がほとんど含まれず、化学的に安定性が高く半導体基盤や金属・プラスチック部品を腐食しないため、合成されたフロンが洗浄に利用されていました。
また、不燃性で無毒性なので、安全性が高いとされています。高品質な日本製半導体では、フロン洗浄が不可欠とされました。しかし、1974年にアメリカのローランドとモリーナによってフロンが成層圏オゾンを破壊する可能性が指摘され、環境破壊への危惧が指摘されるようになったのです。
PCB(ポリ塩化ビフェニル)は、その高い絶縁性や化学的安定性から「夢の油」と称され、産業界で広く利用されました。しかし、その安定性が環境や生物に深刻な影響を与えることが判明し、多くの国で規制がかけられました。PCBは生物濃縮現象により生態系に蓄積され、食物連鎖を通じて伝播し、魚や野生動物の大量死を引き起こします。また、人体に入るとさまざまな症状を引き起こすため、健康へのリスクも高いです。
さらに、PCBの代替品の開発や使用制限により、環境への負荷を軽減する取り組みが進められています。しかし、PCBの他にも、過去に大量に使用された化学物質が現在でも産業廃棄物として問題視されています。アスベストやフロンなどもその代表例であり、これらの化学物質は環境や健康への悪影響が指摘され、適切な処理が求められています。そのため、持続可能な社会を実現するためには、環境負荷の少ない代替品やリサイクル技術の開発が重要です。
得意分野で選ぶPCB処理業者 おすすめ3選
PCB廃棄物処理の
実績なら
丸両自動車運送
得意分野
・産廃コンサル
・収集運搬の許可を全国で保有
・コストの削減が可能
・約5,000件以上のPCB廃棄物処理の実績
低濃度PCBの
処理なら
太洋サービス
得意分野
・低濃度PCBやPFOS、廃棄物を適正に処理
・VOC排ガス処理装置GASTAKの取り扱いが可能
低濃度・改定低濃度
PCBの処理なら
クレハ環境
得意分野
・高度な技術と多彩なノウハウで廃棄物を的確に処理
・地域未来牽引企業として経済産業省より選定