PCB廃棄物を安全に処理する為に!汚染物を無害化する様々な処理方法 | PCB処理 完全攻略ガイド
PCB(ポリ塩化ビフェニル)処理
PCB廃棄物を安全に処理する為に!汚染物を無害化する様々な処理方法
公開:2024.03.26 更新:2024.05.21PCB廃棄物の安全な処理は、環境と人々の健康を守る上で重要です。幸いなことに、様々な処理方法が開発されており、それらはPCBを含む汚染物を無害化する役割を果たしています。脱塩素化分解や水熱酸化分解、さらには光分解やプラズマ分解などの技術が、安全かつ効率的なPCB処理を実現するために活用されています。
目次
PCB処理技術の概要
PCBは産業廃棄物の中でも、人体や環境に悪影響を及ぼす可能性があるものを、「特別管理産業廃棄物」と呼ばれ、適切に処理する必要があります。
PCB処理技術は、PCB(ポリ塩化ビフェニル)やそれを含む機器や廃棄物を安全に分解・処理する技術です。PCBは有用な工業材料ですが、有害性が指摘され、昭和49年以降は製造や新たな使用が禁止されました。しかし、その廃棄物の処理には課題があり、環境への悪影響が懸念されています。
平成13年には、PCB廃棄物処理特別措置法が制定され、専門会社や政府機関が協力してPCB処理を進めています。具体的には、PCB廃棄物を機械部品と絶縁油に分け、絶縁油を含む部分を脱塩素化分解する工程を経て、無害化します。以前は高温焼却が主流でしたが、ダイオキシン類の発生や設備管理の難しさから、脱塩素化分解などの化学処理法が採用されるようになりました。
PCB処理で必要な前処理
PCB処理を効果的に行うためには、適切な前処理が欠かせません。前処理は、PCBを含む機器や廃棄物からPCBを取り除くための重要な工程であり、処理の効率性や安全性に大きく影響します。以下では、PCB処理における必要な前処理について詳しく説明します
◇PCB汚染油を抜き出す前処理が必要
PCB廃棄物を、機械部品等(PCB汚染物)と絶縁油(廃PCB等)に分ける前処理が必要です。現在、技術認可・処理基準化されている代表的な前処理方法は、絶縁油の抜き取り方法はポンプで吸引する方法「溶剤洗浄法」と、重力による傾倒で抜き取る方法「真空加熱分離法」です。
◇溶剤洗浄法
溶剤洗浄法は、PCB(ポリ塩化ビフェニル)汚染油を抜き取るための手法です。まず、PCB使用電気機器から絶縁油として使われているPCB汚染油をポンプで吸引したり、機器を傾けて重力によって抜き取ります。しかし、この方法だけでは残留PCB汚染油が容器内に残ります。そのため、溶剤洗浄法では、トリクロロエチレンやテトラクロロエチレンなどの溶剤を使って、容器内を数回洗浄します。
洗浄の過程で、溶剤がPCBを溶かし込んで抽出し、分離します。この手法によって、容器内の残留PCB汚染油を完全に除去することができます。溶剤洗浄法は効率的であり、洗浄回数や溶剤の種類を調整することで、残留PCBを徹底的に除去することが可能です。
◇真空加熱分離法
真空加熱分離法は、PCB(ポリ塩化ビフェニル)絶縁油を含む電気機器を処理する方法です。この方法では、まず電気機器内の絶縁油を真空密閉な状態で加熱します。加熱によってPCBを含む絶縁油が蒸発し、その蒸気を冷却して液体に戻し回収します。
PCBの沸点は通常310℃ですが、真空条件下では温度を下げて170℃で蒸発できます。このため、真空加熱分離法では電気機器内の絶縁油を加熱することで、PCBを含む絶縁油を蒸発させます。その後、冷却装置で蒸気を液体に戻し、PCBを含む絶縁油を回収します。
この方法では、PCBが蒸発する際に自ら蒸発経路を確保するため、電気機器の解体や切断、破砕などの事前処理が不要です。
PCBの主な処理方法
画像出典先:かんでんエンジニアリング
PCB廃棄物の特性に応じて処理方法を選び、適切に処理する必要があります。
◇脱塩素化分解
脱塩素化分解は、化学反応によってPCB分子内の塩素原子を置換し、PCB以外の物質に変化させる処理技術です。この方法では、アルカリ金属などの触媒を使用して反応を促進します。具体的には、PCBを含む絶縁油にアルカリと添加剤を加え、窒素雰囲気下で約300~320℃に加熱して脱塩素化分解します。
この方式の一つであるアルカリ触媒分解法(BCD法)では、PCBをアルカリと添加剤とともに加熱して反応させます。この反応によって、PCB分子中の塩素原子が水素などに置換され、PCB以外の物質に変化します。BCD法は、米国EPAで開発された技術であり、国内でも実証試験を経て実用化されました。
◇水熱酸化分解
超臨界水を用いた方法で、高温高圧下(374度の超臨界状態)で水酸化ナトリウムを用いてPCBを脱塩素化し、その後酸化反応により水・食塩・二酸化炭素に分解します。この方法はPCB廃棄物だけでなく、紙、木、繊維等のくず類、廃プラ、廃油、廃酸、廃アルカリなど、さまざまなPCB廃棄物に対応可能です。
◇還元熱化学分解
還元雰囲気条件の高温下での熱化学反応により、PCBを分解する方法です。
還元雰囲気は酸素や酸性化ガス、蒸気を取り除き、水素や一酸化炭素、硫化水素などの還元性ガスを含む雰囲気を指し、水熱酸化分解と同様、すべての処理に対して国から技術認定を受けています。
◇光分解
光分解は、PCB中の塩素を脱離させるために紫外線を使用する処理技術です。波長250~300nmの紫外線をPCBに照射することで、ほとんどのPCBが分解されます。このプロセスでは、PCBとイソプロピルアルコール、水酸化ナトリウムを混合し、紫外線を照射します。これによりPCBが脱塩素化され、ほとんどが分解されます。
残ったPCBの処理には、化学反応を利用することがあります。75℃に加温し、触媒を加えて化学反応を促進させます。この反応によって、水、塩化ナトリウム、ビフェニル、アセトンなどの生成物が残ります。
◇プラズマ分解
アルゴンガス等のプラズマを利用して分解する方法です。さらに、15,000℃以上の高温プラズマと1,400℃以上の溶解浴を使用してPCBを分解する「プラズマ溶解分解法」では、異なる形態や形状のPCB廃棄物を一括して処理でき、加えて処理前の解体作業が不要です。
低濃度PCB汚染物の処理で一般的な焼却処理
低濃度PCB汚染物の処理方法の中で、一般的な選択肢の一つが焼却処理です。この処理方法は、低濃度のPCB汚染物を燃焼させて無害な物質に変えることを目的としています。焼却処理は、熱によって有機物を分解し、残留物を安全な固形状態に変えるプロセスです。以下では、低濃度PCB汚染物の焼却処理について詳しく解説します。
◇焼却処理で必要な前処理
低濃度PCBの焼却処理では、前処理として850℃×4時間の加熱によって機器に浸透したPCBを揮発させます。次に、揮発したPCBを含むガスを1,100℃以上の高温で燃焼し、二酸化炭素、水蒸気、塩化水素に分解して無害化にする流れです。
焼却処理施設を設置する際には、燃焼実証試験を行い、排出ガス中のダイオキシン等の濃度や周辺環境への影響を確認しなければいけません。そして、試験を行う前には都道府県や政令市との協議をして、適切な手続きします。最近では、ロータリーキルン式焼却炉、ストーカ式燃焼炉、酸素バーナー式溶解炉などが使用されています。
◇焼却処理
焼却処理は、PCBを1,100℃以上の高温で燃焼させることで、有害物質の生成を防ぎつつ分解する方法です。この処理技術は欧米で広く採用されており、高温での燃焼によってPCBを無害な物質へと変化させます。ただし、日本では周辺住民の懸念や環境への影響を考慮して、あまり行われていませんでした。
具体的な焼却処理の手順は、まず連続式加熱炉で850℃×4時間の加熱を行い、機器に付着したPCBを揮発させる「加熱分離」を行います。次に、揮発したPCBを含むガスは1,100℃以上の高温で燃焼され、二酸化炭素や水蒸気、塩化水素などに分解されます。
焼却処理施設を設置する際には、燃焼実証試験を行い、ダイオキシンなどの有害物質を含む排出濃度や周囲への影響を評価します。
◇焼却処理が適したPCB汚染物
焼却処理は、幅広い種類のPCB汚染物や処理物の処理に適しています。具体的には、以下のようなPCB汚染物や処理物が焼却処理に適しています。
廃PCB等:廃PCBは高温焼却によって効果的に処理され、安全かつ効率的に分解されます。
PCB汚染物(紙くず・木くず・繊維くず・廃プラ・金属くず・陶磁器くず):これらの素材は焼却処理によって燃焼され、PCBを含む可能性がある場合にも処理されます。
PCB処理物(廃油・廃酸・廃アルカリ・紙くず・木くず・繊維くず・廃プラ・金属くず・陶磁器くず):廃油や廃酸、廃アルカリなどの処理物も焼却処理に適しています。高温での燃焼により、これらの物質を安全に処理し、PCBを含む場合には分解します。
微量PCB混入廃電気機器等:法制度上適用可能な微量のPCB混入廃電気機器も焼却処理によって処理されます。
PCB処理技術は、有害なPCB(ポリ塩化ビフェニル)を安全に分解・処理するための技術であり、特別管理産業廃棄物として適切な処理が求められます。主な処理方法には脱塩素化分解、水熱酸化分解、還元熱化学分解、光分解、プラズマ分解があり、それぞれの特性に応じて選択されます。
低濃度のPCB汚染物には焼却処理が一般的であり、850℃×4時間の加熱による前処理を経て、1,100℃以上の高温で燃焼されます。焼却処理は廃PCBやPCB汚染物、PCB処理物、微量PCB混入廃電気機器など、幅広い物質を処理するのに適しています。
PCB処理における前処理も重要で、溶剤洗浄法や真空加熱分離法などの方法が用いられます。これらの前処理により、PCBを含む物質からPCBを取り除く効率が向上し、処理の安全性も確保されます。 環境への悪影響を最小限に抑えながら、PCB処理技術は安全かつ効率的な処理を行うために、専門の知識や技術が必要です。これにより、PCB廃棄物の適切な処理が確保され、人体や環境への悪影響を最小限に抑えることができます。
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