産業廃棄物に含まれるPCBによる大気汚染や焼却処理について解説 | PCB処理 完全攻略ガイド
PCB(ポリ塩化ビフェニル)処理
産業廃棄物に含まれるPCBによる大気汚染や焼却処理について解説
公開:2024.05.25 更新:2024.05.25PCBは大気汚染の原因で、環境中に広く分布し、高温で燃焼されると拡散します。生体に取り込まれると健康被害を引き起こす可能性があり、政府は対策として焼却処分や化学処理法を用いて排出量を減らしています。焼却処分ではPCB濃度が基準値以下になるよう注意が必要です。
目次
PCBによる大気汚染とは?
化学物質が大気汚染の原因であることはよく知られていますが、産業廃棄物に含まれるPBCも大気汚染を引き起こす化学物質のひとつです。こちらでは、PBCの特徴とPCBが引き起こす大気汚染について説明します。
◇PCBとは何か?
Poly Chlorinated Biphenyl(ポリ塩化ビフェニル)のことで、人工的に作った油状の化学物質です。PCBは、水に溶けにくい、沸点が高い、熱で分解しづらい、不燃性である、電気絶縁性が高いなどの特徴があります。
化学的に安定しているため、かつては電気機器の絶縁油、熱交換器の熱媒体、ノンカーボン紙など、さまざまな用途で利用されていました。現在は、製造および輸入が全面的に禁止されています。
◇PCBが引き起こす大気汚染
PCBは沸点が高いため容易に気化しないと考えられがちですが、実際には半揮発性があり、大気中に拡散されやすい性質を持っています。これにより、PCB分子は気流に乗って広範囲に広がり、深刻な大気汚染を引き起こし、健康被害や長期的な環境汚染リスクなど多くの問題をもたらしています。
PCBは水に溶けにくい性質を持っていますが、大気中に拡散されたPCBが河川や海にまで達し雨によって落下すると、海洋生物の餌に付着することがあります。その結果、生物濃縮が発生し、海洋汚染を引き起こすことも懸念されています。
PCBが引き起こす大気汚染の悪影響とは?
PCBは容易に分解されないため、生体に取り込まれると蓄積し、皮膚症状や肝機能障害などの健康被害が生じます。PCBが引き起こした事件としては、PCBが誤って食用油に混入したことで約1万3,000人が健康被害を受けたカネミ油症事件が有名です。
◇環境への悪影響
PCBは大気、食事、水などを通じて広範囲に拡散しており、世界中で野生動物が汚染されていることが確認されています。PCBは自然環境では容易に分解されないため、一度汚染された環境が元に戻るには長い時間が必要です。
PCBは一度生体に取り込まれると、分解されずに蓄積するという特徴もあります。このため、PCBは食物連鎖を通じて移動し、食物連鎖の上位に位置する人間や肉食動物がより多くの影響を受けやすくなります。
◇人体への悪影響
PCBを大量に摂取することで生じる主な健康被害は、ざ瘡様皮疹や発疹などの皮膚症状、色素沈着や肝機能障害、免疫機能の低下などです。PCBは発がん性の疑いがあるため、長期間にわたりPCBを蓄積すると神経系や免疫系に悪影響を及ぼし、肺炎やウイルス性の病気にかかりやすくなることも考えられます。
母親の体内にPCBが蓄積されている場合、へその緒を通じて胎児にも影響が及び、発育障害や先天性異常のリスクが増加することも指摘されています。
◇カネミ油症事件
食用油の製造過程で脱臭工程の熱媒体として使用されたPCBが、誤って商品に混入したことで起こった事件です。このPCB汚染された油を摂取していた多くの人々が健康被害を受け、患者数は約1万3,000人に上りました。
焼却処分や化学処理法で安全に処分しよう!
安全にPCB廃棄物を処分する方法には、焼却処分、化学処理法、洗浄、分離などがあります。焼却処分は、高温度で燃焼して無害化する方法で、化学処理法は、化学反応でPCBを他の物質に変化させる方法です。
◇焼却処分
低濃度PCB汚染機器の廃棄処分において、最も一般的な処理方法は高温焼却です。PCB廃棄物を運搬車両で現地から搬出し、高温炉で完全に燃焼させて無害化します。
850℃で4時間加熱し、機器に付着しているPCBを揮発させた後、揮発したPCBを含むガスを1100℃以上の高温で燃焼させます。これにより、PCBは二酸化炭素、水蒸気、塩化水素に分解され、無害化されます。
焼却処分は、コストがかからない方法ですが、燃焼ガスが発生するのがデメリットです。
◇化学処理法
化学処理法の脱塩素化分解方式は、アルカリ剤や触媒などをPCBと混合させ、化学反応によってPCBの塩素を水素などに置き換える方法です。PCB廃棄物を前処理として、機械部品(PCB汚染物)と絶縁油(廃PCB)に分け、機械部品に付着したPCBは溶剤洗浄や真空加熱分離装置などにより分離・回収します。
回収したPCBは絶縁油(廃PCB)と共に、脱塩素化分解を行い無害化します。この方法は、焼却とは異なりダイオキシン類などの副産物の生成がなく、ガスが発生しないのがメリットです。
焼却処分でダイオキシン類の濃度は基準値以下となる?
低濃度PCB廃棄物が不完全燃焼だとダイオキシン類を生成する可能性があるため、焼却処理する際は注意が必要です。焼却処理をするためには、各種環境法令の基準を満たさなくてはいけません。
PCBの各種法令基準は、環境省 環境再生・資源循環局 廃棄物規制課が作成した「低濃度PCB廃棄物の処理に関するガイドライン-焼却処理編-」に記載されています。
出典元:低濃度PCB廃棄物の処理に関するガイドライン-焼却処理編-
◇PCBの各種法令基準
低濃度PCB廃棄物を安全かつ円滑に処理するためには、「処理対象物の管理」「排水、排ガス、PCB濃度の測定」「処理によって生じた廃棄物の管理」が必要です。排ガスの暫定排出許容限界、排水基準、作業環境管理基準などが細かく定められているため、低濃度PCB廃棄物の焼却処理する際は確実に満たす必要があります。
環境省 環境再生・資源循環局 廃棄物規制課が作成した、「低濃度PCB廃棄物の処理に関するガイドライン-焼却処理編-」に記載されているPCBの各種法令基準は以下のとおりです。
・暫定排出許容限界(排ガス)
最大 0.25mg/m3(液状 PCB 焼却時 0.15mg/m3)
平均 0.15mg/m3(液状 PCB 焼却時 0.10mg/m3)※48 時間につき 3 回測定した値の平均値
・排水基準 :0.003mg/L
・作業環境管理濃度:0.01mg/m3(10μg/m3)
・暫定大気環境基準:0.0005mg/m3
・水質環境基準:検出されないこと(定量下限 0.0005mg/L)
・土壌溶出量基準:検液中に検出されないこと(定量下限 0.0005mg/L)
・底質の暫定除去基準:10mg/kg-乾燥重量
◇安全に分解
低濃度PCB廃棄物を完全に燃焼し分解しないと、ダイオキシンが発生する可能性があります。前項でもご説明いたしたように、ダイオキシンは毒性があり人体に悪影響を及ぼすため、低濃度PCB焼却処理をする際は細心の注意が必要です。
2009年(平成21年)2月27日に実施した微量PCB混入廃電気機器等の実証試験では、低濃度PCB廃棄物は、安全に分解されていることが分かっています。
具体的には、焼却処理施設の敷地境界における大気中のPCB濃度、施設周辺の大気中のダイオキシン類濃度、排ガス中のPCBおよびダイオキシン類の濃度、すべてが関係法令に定める基準値以下であることが確認されました。
PCBによる大気汚染は、化学物質が大気中に放出されることで引き起こされます。PCBは環境中に広く分布し、特に高温で燃焼されると大気中に拡散されます。PCBは生体に取り込まれると蓄積し、健康被害を引き起こす可能性があります。
政府は、PCBの排出を減らすために焼却処分や化学処理法を用いた対策を行っています。焼却処分ではPCB濃度が基準値以下になるよう注意が必要です。
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