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軽視出来ないPCB抜油後の容器等の処分負担と諸外国との制度の違い | PCB処理 完全攻略ガイド

PCB(ポリ塩化ビフェニル)処理

軽視出来ないPCB抜油後の容器等の処分負担と諸外国との制度の違い

PCB(ポリ塩化ビフェニル)処理

公開:2024.07.23 更新:2024.07.23

変圧器

微量のPCBを含む抜油後の容器等の処分には膨大な費用がかかります。諸外国と比較すると、日本の基準は極めて厳しく、合理的かつ効率的な処理が求められています。この厳格な制度により、リスクの低い微量PCB廃棄物の処理が進まず、費用負担が大きな問題となっています。

微量PCB廃棄物の存在と諸外国との違い

微量PCB廃棄物は、非意図的にPCBが混入した電気機器や絶縁油を指します。日本では厳格な規制と処理方法が設けられていますが、諸外国と比較すると、その対応には異なる点が見受けられます。

◇微量PCB廃棄物とは

PCB(ポリ塩化ビフェニル)は、既に製造・輸入・使用が禁止されています。しかし、2002年(平成14年)にPCBが含まれていないとされる機器でも、微量のPCBが混入していることが判明しました。

微量PCBとは、PCBは非意図的に電気機器や絶縁油に混入したPCB廃棄物のことを指します。一方、高度PCB廃棄物は、PCBが意図的に使用されたPCB濃度が高い産業廃棄物です。

微量PCB廃棄物(電気機器)の約96%(台数ベース)のPCB濃度は0.00005%~0.005%に対し、高濃度PCB廃棄物のPCB濃度は濃度60~100%です。処分方法も異なり、高濃度PCB廃棄物は化学的に処理しますが、微量PCB廃棄物は焼却などで処分します。

◇微量PCB廃棄物をめぐる諸外国との制度の違い

PCBの廃絶を目指すストックホルム条約や主要先進国の処理対象基準は50ppmであるのに対し、日本では0.5ppmを超える場合が対象となります。微量のPCBを含む抜油後の容器等については、行政通達のもとでPCB絶縁油に関する処理目標基準が準用されています。

諸外国の制度と比較すると、微量PCBの科学的・客観的リスクが考慮されず、絶縁油と同様に非常に厳しい基準が適用されているのが現状です。

微量PCB廃棄物処分の課題

画像出典:フォトAC

諸外国よりも厳しい現行制度では、リスクの低い微量PCB廃棄物の処理には膨大な費用がかかります。合理的・効率的な処理が阻害され、微量PCB廃棄物処分も進んでいません。

◇抜油後の容器処理にかかる費用負担

日本の現行制度では、微量PCB廃棄物の処理だけで約4兆円の莫大な費用が発生すると試算されています。その費用の8から9割が、抜油後の容器等の処理費用です。この費用を削減するためには、新たな仕組みの導入が必要ですが、それでも約1兆6,000億円の費用がかかることが予測されます。

◇現在の制度の問題点

ストックホルム条約や他の主要先進国の基準よりも著しく厳しい基準が準用されている現在の制度は、環境管理の基本であるリスク(量や濃度)に応じた規制となっていません。そのため、リスクが極めて低い抜油後の容器等に莫大な費用がかかってしまうことから、合理的・効率的な処理が著しく阻害されていているのが問題となっています。

ストックホルム条約では、2028年までにPCB廃油および電気機器を環境上適正に管理し、破壊または不可逆的変換方法によってその性状を完全に消失させる処理を行うことが定められています。しかし、抜油後の容器等の処理が進んでおらず、条約の遵守に関する国民的不安も惹起しています。

抜油後の容器等の残存量と検討事項

高濃度PCB廃棄物の処理対象量と比較すると、抜油後のPCB廃棄物の残存量はごくわずかです。製鋼用電気炉における無害化処理の方策を実証したところ、抜油後の容器等を含む低濃度PCB廃棄物の安全な処理が可能であることが示されました。

◇抜油後のPCB廃棄物の残存量

高濃度PCB廃棄物の処理対象量が20,500トンに対し、微量PCBが混入した電気機器の絶縁油中PCB量は7トン(約160万台の電気機器)で、高濃度処理の対象量のわずか0.034%です。抜油後の容器等の内部に残存または付着しているPCBについては、絶縁油の数%(数百kg)で、これは高濃度処理対象量の約0.001%に過ぎません。

◇抜油後の容器等処分の検討方針

低濃度のPCB廃棄物の処理は、廃棄物の処理および清掃に関する法律にもとづき、無害化処理認定業者などによって処理が進められてきました。平成28年11月から平成29年1月にかけて行われた実証試験では、PCB濃度が10.4ppmから54.0ppmの変圧器を用いて、解体・選別、運搬、無害化処理の一連の過程が検証されました。

この試験の結果、低濃度PCB汚染廃電気機器等の抜油後の容器に残存するPCBの量は極めて少なく、その処理過程において排ガスや作業環境中のPCB濃度、ダイオキシン類濃度が基準値を下回ることが確認されました。

これにより、抜油後の容器等の処理は可能であると示されました。しかし、低濃度のPCB汚染絶縁油を除いた抜油後の容器等の処分については、現在の処理施設の数や能力が不足しているという課題があります。

国際条約や主要先進国の規制基準と同等またはそれ以下の濃度のPCB廃棄物については、規制改革を行うことが適切です。これにより、残存するPCB量に応じた合理的な処理の仕組みを導入し、国民の不安を軽減するとともに、金属資源の円滑な循環を促進することが求められます。

抜油後容器の扱いに関する今後の方向性

製鋼用電気炉による低濃度PCB廃棄物の安全な無害化が確認され、ワーキンググループはこれにもとづき適切な措置を講じる方針を示しました。この措置により処分の負担が軽減できれば、日本の国際競争力が向上し、新たな成長への活力が生まれることが期待されます。

◇ワーキンググループが示す方針

平成28年に閣議決定された「ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基本計画」では、低濃度PCB廃棄物の処理を安全かつ効率的に行うため、処理体制の充実・多様化と処理料金の低減が推進されています。

最近の討論でも、抜油後の容器等を含む低濃度PCB廃棄物は、製鋼用電気炉を用いて無害化できることが確認されました。これにより、ワーキンググループは議論や実証された内容にもとづき、適切な措置を講じて低濃度PCB廃棄物の適正な処理を推進していく方針を示されました。

具体的には、一定の条件のもと、個別による無害化処理、既に無害化処理認定を受けている業者と連携した無害化処理などが可能になります。

◇処分の負担軽減で期待されること

抜油後の容器等に残存するPCBは極めて少量で、環境や人体への影響も軽微です。国民の安全や環境保全を確保しつつ、国際的にバランスの取れた合理的な規制改革を実施することで、日本社会の負担を軽減できます。

PCB抜油後の容器等の処分に費やしていた費用を、生産性向上を目的とした設備投資などに活用すれば、国際競争力と新たな成長への活力を創出できるでしょう。


微量PCB廃棄物は、非意図的にPCBが混入した電気機器や絶縁油を指し、日本では厳格な規制と処理方法が設けられていますが、諸外国と比較すると対応に違いがあります。日本の基準は0.5ppm超であり、ストックホルム条約や主要先進国の50ppmに比べて非常に厳しいです。

これにより、リスクの低い微量PCB廃棄物の処理には膨大な費用がかかり、処理が進んでいないのが現状です。平成28年から29年にかけて行われた実証試験では、低濃度PCB汚染廃電気機器等の抜油後の容器の処理が可能であることが確認されましたが、処理施設の数と能力が不足しています。

国際基準に合わせた規制改革が必要で、合理的な処理体制を構築することで国民の不安を軽減し、金属資源の円滑な循環を促進できます。製鋼用電気炉による安全な無害化が確認され、今後の処分の負担軽減と日本の国際競争力向上が期待されます。

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