汚染土壌とは?土壌汚染対策法の基準とPCB汚染で調査が必要なケース | PCB処理 完全攻略ガイド
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汚染土壌とは?土壌汚染対策法の基準とPCB汚染で調査が必要なケース
公開:2024.09.26 更新:2024.09.26汚染土壌は、重金属や有機化合物などの有害物質により汚染された土壌のことを指し、周辺環境や人々の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。土壌汚染対策法では、特定有害物質が基準値を超えると土壌汚染とみなされ、調査や対策が必要になります。
特に、特定施設の廃止や土地の大規模な変更時、または健康被害が懸念される場合には、法に基づく調査が義務付けられます。PCB汚染に関しても、一定の条件下で調査が必要となります。
目次
汚染土壌の特徴と環境への影響
汚染土壌の適切な管理と処理は、環境保全と人々の健康を守るために非常に重要です。汚染された土壌は、農作物や地下水にも影響を与えるため、早期の対策と適切な処理が求められます。
◇汚染土壌とは?
汚染土壌とは、有害物質によって汚染された土壌のことを指します。汚染が発生する主な原因として、工場の操業や工事の際に、有害な物質が不適切に取り扱われて排出され、地下に浸透することが挙げられます。
具体的には、重金属や有機溶剤、農薬など、自然環境や人々の生活・健康に悪影響を及ぼす物質が、排水や地表から浸透して土壌に蓄積します。これらの有害物質が蓄積することで、周囲の環境や地下水に影響を与え、健康被害や環境汚染のリスクを高める可能性があります。
特に、工場や建設現場から発生する汚染土壌は、土壌環境基準値を超える有害物質を含むことが多いため、通常の産業廃棄物としての処理が困難です。このため、汚染された土壌は汚泥として特別な処理が必要となり、適切な処理が行われない場合、さらなる環境問題を引き起こす恐れがあります。
◇過去に起きた汚染土壌による問題
これまでに起きた汚染土壌による問題を見てみましょう。まず、19世紀末の足尾銅山鉱毒事件では、土壌汚染が原因で、渡良瀬川から取水する農地や足尾から流出した土砂が堆積した田園で稲が枯れる被害が記録されました。
また、1950年代の「イタイイタイ病」では、神岡鉱山から排出されたカドミウムが下流の水田に流れ込み、汚染された米や野菜を摂取した住民に骨軟化症や腎機能不全を引き起こしています。
さらに、1980年代にはトリクロロエチレンなどの有機溶媒による地下水汚染が社会問題となり、水質汚濁防止法の改正が行われるきっかけとなりました。環境庁は1991年に「土壌の汚染に係る環境基準」を定め、調査や除去のガイドラインを作成し、土壌汚染対策を推進しました。
21世紀に入ると、大型マンションやショッピングセンターの再開発に伴い、土壌汚染への社会的な関心が高まり、これを背景に2002年に土壌汚染対策法が制定されました。その後、2017年に土壌汚染対策法が改正され、2018年と2019年に二段階で新たな法律が施行されました。
汚染土壌の処分に関する法律
画像出典:フォトAC
汚染土壌の処分に関しては、主に「土壌汚染対策法」が適用されます。土壌汚染対策法は、再開発に伴う土壌汚染の状況を把握し、人の健康被害を防ぐための措置を定めた法律です。
◇土壌汚染対策法
土壌汚染対策法は、2003年に施行されました。この法律は、汚染の発生を未然に防ぐ水質汚濁防止法とは異なり、既に発生した土壌汚染への対応に重点を置いています。
ただし、廃棄物処理法では、土壌は廃棄物とはみなされません。たとえ特定の有害物質が基準値を超えて含まれていても、土壌は「汚泥」とはされません。土壌が「汚泥」と定義されるのは、掘削などで排出され、泥状になった場合に限られます。
この廃棄物処理法は、廃棄物の処理に関する規則や罰則を詳細に規定しており、産業廃棄物に関わる事業者はこの法律に従って事業を進める必要があります。
◇土壌汚染対策法が制定された背景と目的
土壌汚染対策法が制定された背景には、近年、企業の工場跡地や工業地帯の再開発が進む中で、重金属や揮発性有機化合物などによる土壌汚染が次々と明らかになってきたことがあります。
特に、近年は汚染事例の発見件数が著しく増加しており、新たに判明した土壌汚染の事例が継続的に高い水準で推移していることが問題となっています。こうした状況から、土壌汚染への対応が社会的な課題となり、その対策を強化するためにこの法律が制定されました。
この法律は、土壌汚染に対する事後対策を主な目的としています。具体的には、土壌汚染に関する基準の制定や、有害物質が基準を超えて検出された場合にどのように対応すべきかを詳細に定めています。
例えば、汚染土壌の除去や改善措置についても具体的な手順が示されており、これにより土壌汚染による人の健康被害を防ぐための枠組みが確立されました。このように、土壌汚染対策法は、環境と人々の健康を守るために重要な役割を果たしています。
汚染土壌の種類と基準値
汚染土壌は、その中に含まれる有害物質の種類や濃度によって異なり、適切な対策が求められます。日本の法律では、土壌中に含まれる特定有害物質の基準値が定められており、この基準を超えた場合、汚染土壌とみなされます。
◇汚染土壌の基準値に対する考え方
土壌環境基準とは、環境省が「人の健康を保護し、生活環境を守るために維持すべき基準」として定めたものです。この基準は、土壌中の有害物質ごとに最大許容濃度を規定し、土壌汚染の判断や、汚染土壌を改善する際の目標値となります。
基準設定には、土壌の「水質を浄化し、地下水を養う機能」と、農用地での「食料生産機能」に重点が置かれています。特徴として、多くの基準値が溶出試験の結果に基づいています。基準の溶出項目は28項目あり、これらを一括して分析することで土壌汚染の有無を確認します。また、廃棄物のリサイクル時にもこの基準が利用されます。
土壌環境基準は、環境基本法のもとで定められており、土壌のほかに河川、海洋、大気、騒音など多岐にわたる基準が含まれます。これらは人々の健康や公害防止のための指針として使われています。
具体的な調査項目は、溶出試験で28項目、含有試験で3項目です。この基準は、私たちが健康で安全に生活するために必要な目標値であり、他の法令に比べて厳しい内容となっています。
◇汚染土壌の種類とPCBの基準値
土壌汚染は、土壌に有害物質が入り込むことで発生し、その有害物質は主に3つの種類に分類されます。第1種特定有害物質、第2種特定有害物質、第3種特定有害物質です。
第1種特定有害物質は、人の健康に影響を与えやすい揮発性有機化合物(VOC)が含まれます。これらは1970年代初頭から工場で洗浄剤として使われてきましたが、当時は規制がなく、古い工場の取り壊し時に土壌汚染が発覚することがよくあります。
状況調査では、土壌ガス調査が必要です。代表的な物質には、クロロエチレン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタンがあります。
第2種特定有害物質は、人体に影響を与える重金属類です。過去に大規模な公害を引き起こした物質も多く含まれ、慎重な対応が必要です。これらの有害物質は地表近くで高濃度の汚染を引き起こすことが多く、特にフッ素や六価クロムは水に溶けやすいため、地下に浸透し、地下水を通じて広範囲に汚染を広げる可能性があります。
代表的な物質には、カドミウムおよびその化合物、六価クロム化合物、フッ素およびその化合物があります。
第3種特定有害物質は主に農薬で、人体への影響から製造が中止されたものも含まれています。特にPCBは、一度土壌が汚染されると、その影響が長期間にわたることがわかっています。これらの物質には、シマジン、有機リン化合物、PCBが含まれます。
これらすべての有害物質には基準値が定められており、調査で基準値を超えると汚染土壌と判断されます。
PCBの土壌汚染と調査が必要なケース
PCBによる土壌汚染は、生活環境や生態系に大きな影響を与え、間接的に健康被害を引き起こす可能性が高い問題です。ここでは、土壌汚染による影響と調査が必要なケースについて解説します。
◇PCBによる土壌汚染
PCBが土に混ざると、周囲の土壌を汚染し、さらに広がるリスクがあります。例えば、PCBを含む排水が漏れたり、PCBを含む廃棄物が土に埋められて雨で溶け出したりすると、周囲の土壌に汚染が広がります。
土壌汚染は目に見えないため、汚染が広がると長期間にわたり悪影響を及ぼします。汚染された土に触れることで、有害物質が人の皮膚に付着したり、汚染された土から有害物質が地下水に溶け出し、その水を飲んでしまうなどの問題が生じます。
また、有害物質が大気中に拡散して人が吸い込む、汚染された土が雨で川や海に流れ、汚染された魚を人が食べるなど、さまざまな経路で健康被害が懸念されます。
◇調査が必要なケース
土壌汚染調査が必要なケースについて、土壌汚染対策法に基づく状況と、地上トランスの存在に関する状況を解説します。土壌汚染対策法に基づく調査の必要条件は以下の通りです。
特定施設の廃止時
水質汚濁防止法に基づく特定施設(工場や廃棄物処理施設など)を廃止する際、その施設で扱っていた有害物質が土壌に残留している可能性があります。そのため、特定施設の廃止時には土壌汚染調査が必要です。
大規模な土地の変更時
環境省令で定められた規模以上の土地を変更する場合、都道府県知事が必要と判断すれば、土壌調査が義務付けられることがあります。これは、土地の掘削や改変によって過去の汚染が表面化するリスクがあるためです。
健康被害の懸念がある場合
都道府県知事が、特定の土地で土壌汚染による健康被害の可能性があると判断した場合も、土壌調査が求められます。この場合、土壌中に含まれる有害物質が基準値を超えているかどうかを確認するための調査が実施されます。
また、地上にトランスがある場合も調査が必要です。これは、トランスの絶縁油にPCB(ポリ塩化ビフェニル)が使用されているためです。地上トランスがあるだけでは調査の対象とならないこともありますが、PCBを含むトランスが屋外に保管されている場合や、絶縁油が漏洩した事故があれば、土壌汚染のリスクが高く、調査が必要です。
さらに、対象外であっても、トランスが設置されている土地では自主的に調査を行うことで、安全性を確保し安心につながります。
汚染土壌は、有害物質によって環境や健康に悪影響を及ぼす土壌のことを指し、その管理と処理が非常に重要です。特に工場や建設現場から発生する汚染土壌は、重金属や有機溶剤などを含み、地下水や農作物にも悪影響を与える可能性があります。
過去の土壌汚染事例として、足尾銅山鉱毒事件やイタイイタイ病などが挙げられ、これらの問題を背景に土壌汚染対策法が制定されました。汚染土壌は、特定有害物質の基準値を超えた場合に適切な処理が求められ、調査や改善措置が行われます。
特定施設の廃止や大規模な土地変更時、または健康被害の懸念がある場合には、土壌汚染調査が義務付けられます。また、トランスの絶縁油にPCBが使用されている場合も、漏洩事故があった際に調査が必要です。
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