PCB塗膜が発見されたときの対応事例と廃棄物削減への取り組み | PCB処理 完全攻略ガイド
PCB(ポリ塩化ビフェニル)処理
PCB塗膜が発見されたときの対応事例と廃棄物削減への取り組み
公開:2024.11.28 更新:2024.11.28PCB(ポリ塩化ビフェニル)は過去に塗料や電気機器に使用されていたが、その強い毒性が判明し、使用が禁止されました。特に橋梁などの鋼構造物の塗膜に含まれるPCBは、発がん性や皮膚障害を引き起こす可能性があり、適切な管理と処理が求められています。
国道2号左門橋補修工事では、PCBを含む塗膜が検出され、PCB濃度は低かったものの鉛が高濃度で含まれていたため、特別管理産業廃棄物として処理されました。湿式工法を使用して塗膜を除去し、粉塵の飛散を防ぐために作業場を囲み、作業員には防護服を着用させて安全対策が徹底されました。
国道2号浜手バイパス高架橋の塗装塗替工事では、鉛が高濃度で含まれていましたが、溶出濃度は基準内だったため通常の産業廃棄物として処理可能でした。しかし、有害物質の飛散を防止すべく、塗膜に適した剥離剤を使用し、粉塵抑制のために集塵機や局所排気装置を配置しています。
目次
一部塗料で使用されていたPCB含有塗膜とは?
PCBは強い毒性を持ち、環境や健康に深刻な影響を及ぼすことが判明し、現在では使用が禁止されています。特に、古い塗膜に残っているPCBは、取り扱いに注意が必要です。ここでは、PCBを含む塗膜の特性とその問題点について詳しく見ていきます。
◇橋梁等の塗膜に含まれる有害物質
橋梁や鋼構造物に使用される塗膜には、鉛やクロム、PCB(ポリ塩化ビフェニル)などの有害物質が含まれている場合があります。
これらの物質は防錆効果や耐久性の向上を目的に広く利用されてきましたが、その有害性が明らかになるにつれ、取り扱いには慎重さが求められるようになりました。特に鉛系塗料は、安価で高性能だったため過去には塗装材の標準品として採用されていました。
しかし、鉛は人体に吸収されやすく、過剰な摂取は血液中に蓄積し、鉛中毒を引き起こす危険性があります。このため、労働者の健康被害防止を目的とした規制が強化され、塗膜除去作業において適切な処理方法が求められるようになりました。また、クロム化合物も同様に健康や環境への悪影響が懸念されています。
そのため、作業現場においては有害物質を含む塗膜の粉塵が飛散しないよう、湿式工法や剥離剤の使用が推奨されています。
◇PCB塗膜の有害性
PCBは、耐熱性や化学的安定性に優れた特性から、過去に塩化ゴム系塗料や電気機器などに広く使用されていました。しかし、1973年にその毒性が明らかになると、製造や使用が禁止されました。PCBは脂肪組織に蓄積しやすく、発がん性や皮膚障害などの深刻な健康被害を引き起こすことが確認されています。
また、漏洩や不適切な管理により環境汚染を引き起こす可能性も高い物質です。PCBを含む塗膜は、過去に施工された橋梁や構造物に残存していることがあり、適切な処理が行われていない場合も少なくありません。
このような状況に対応するため、2001年に「PCB措置法」が制定され、PCBを含む廃棄物の安全かつ確実な処理が法的に義務付けられました。
PCB塗膜を除去する際には、通常の塗膜よりも厳格な管理が必要です。例えば、粉塵の飛散を防ぐ湿式工法や、除去後の廃棄物の適切な処理体制の確保が求められます。また、処理後の塗膜廃棄物は専用の施設で安全に保管・処理されなければなりません。
PCB含有塗膜の試験と除去の方法
PCB含有の塗膜を適切に除去する方法を検討するためには、まず塗膜のPCB含有量を把握する必要があります。本記事では、PCB含有塗膜の試験方法と、除去を行う際の手順について詳しく解説します
◇含有量の試験
PCB含有塗膜の適切な処理を行うためには、塗膜に含まれるPCBの濃度を正確に測定する試験の実施が有効です。
試験では、塗膜の一部を採取し、「低濃度PCB含有廃棄物に関する測定方法」(環境省)に基づいてPCBの含有量を分析します。この試験では、PCB濃度が1.0%以上(10,000mg/kg以上)、0.1%~1.0%(1,000~10,000mg/kg)、0.1%以下(1,000mg/kg以下)の3つの基準値に応じて作業や廃棄処理の方法が変わります。
含有量試験は、作業計画を立てる上での基礎データを提供するものであり、作業員の安全確保や環境保全のために欠かせないステップです。
◇溶出量の試験
塗膜に含まれるPCBや鉛が産業廃棄物として適切に処理されるためには、溶出量試験が必要です。
この試験では、塗膜に含まれる有害物質がどの程度外部環境に溶出するかを測定します。具体的には、環境省が定める「産業廃棄物の検定方法に係る分析操作マニュアル」に基づき、鉛や六価クロムなどの有害物質が基準値を超えていないかを確認します。
このように、溶出量試験は廃棄物の分類と処理方法を決定する上で非常に重要な役割を果たしています。
◇塗膜除去の方法
塗膜にPCBや鉛が含まれている場合、その除去には粉塵の飛散や作業員の安全に配慮した方法が求められます。
一般的には剥離剤を使用した湿式工法が採用され、粉塵の発生を抑えるとともに有害物質の飛散を防ぎます。また、湿式工法だけでは対応しきれない場合、動力工具による補助作業が行われます。
これに加え、作業場全体をシートで覆い、粉塵や塗膜カスが外部に漏れ出さないよう徹底した隔離対策が施されます。さらに、除去した塗膜カスは専用の廃棄用容器に詰め、厳格に管理された状態で搬送・処理されます。
PCB塗膜が発見されたときの対策の事例
◇国道2号左門橋補修工事
国道2号左門橋補修工事では、PCBを含む塗膜が検出されたため、適切な対策が実施されました。
事前の含有量試験により、PCB濃度が1.1mg/kgと低濃度であることが確認されましたが、鉛含有量は50,000mg/kgと高く、溶出量試験でも鉛の溶出濃度が基準値を大幅に超える120mg/lが検出されました。この結果、これらの塗膜は特別管理産業廃棄物として厳重な管理が必要とされました。
作業では剥離剤「バイオハクリX」を採用し、湿式工法による塗膜除去が行われました。この方法により、粉塵の飛散が抑制され、作業員の安全と周辺環境の保護が徹底されました。また、作業場はシートで二重に囲み、粉塵が外部に漏れないよう配慮されました。
さらに、作業中の粉塵濃度を測定するために粉塵計が設置され、通行する一般歩行者への影響がないか確認が行われました。作業員には全身化学防護服や電動ファン付き呼吸保護具を着用させ、安全を確保しています。
除去された塗膜カスは専用の廃棄用袋に収納後、ドラム缶に格納され、特別管理産業廃棄物として適切に処理されました。
◇国道2号浜手バイパス高架橋塗装塗替工事
国道2号浜手バイパス高架橋の塗装塗替工事でも、有害物質の管理が重要な課題となりました。
この工事では含有量試験の結果、鉛が6,700~24,000mg/kg含まれていることが確認されました。溶出量試験では、鉛の溶出濃度が0.1mg/l未満と基準値内であったため、通常の産業廃棄物として処理することも可能です。
しかし、本工事では有害物質の飛散防止が重要視され、徹底した管理体制が取られました。湿式工法が採用されましたが、使用した剥離剤「バイオハクリX」が現場の塗膜に適合しなかったため、代わりに「MSハクリ」が採用されました。現場試験で塗膜の軟化が迅速に確認され、作業効率が向上したとのことです
また、ブラスト処理を含む1種ケレンが一部で行われ、大型集塵機を用いて粉塵の発生を抑制しました。作業場では、シートで囲んだ隔離空間が設置され、粉塵の拡散を防止するためのエアシャワーや局所排気装置が配置されました。
もちろん作業員の安全を確保するため、呼吸保護具や防護服が使用され、作業後は専用の廃棄容器で適切に処分しています。廃棄物処理についても、廃棄用袋に密封して運搬され、基準に従った処理が徹底されました。
PCB廃棄物を無くすために必要な取り組み
年にわたり使用されてきたPCB廃棄物の適切な処理と廃絶は、今後の環境保護において重要な課題です。PCBを含む廃棄物を無くすためには、法令に基づいた取り組みや、適切な廃棄物管理が求められます。
PCB廃棄物を減少させるために必要な取り組みと、企業や自治体が実施すべき具体的な対策について紹介します。
◇安全性確保の重要性
PCB廃棄物の適正処理において、安全性の確保は最優先事項です。PCBは高い毒性を持つ物質であり、その取り扱いや処理が不適切であれば、周辺環境や作業従事者への深刻なリスクとなります。
日本の処理施設では、施設全体を閉鎖系にすることで、外部への漏洩を防止しています。この設計により、揮発性のPCBが施設外へ流出するリスクを最小限に抑えています。さらに、作業者の健康を守るために、防護具の着用や血中PCB濃度の測定など、安全対策が徹底されています。
また、定期的な設備点検と補修も欠かせません。設備の経年劣化により安全性が損なわれる可能性があるため、これらの取り組みを計画的かつ確実に実施することが求められます。
特に、過去のPCB漏洩事故の教訓を活かし、トラブル発生時の迅速な対応手順や、地域住民への説明体制の整備も重要です。
安全性の確保は、作業従事者や施設周辺の住民のみならず、地球規模での環境保全に貢献する取り組みであり、今後も継続的な改善が期待されます。
◇情報提供やコミュニケーションの推進
PCB廃棄物の適正処理を進めるには、情報提供とコミュニケーションの強化が重要な鍵を握ります。処理施設の安全性や処理方法に関する正確な情報を住民や関係者に共有することで、誤解や不安を解消し、処理事業への信頼を築くことができます。
例えば、施設見学会の実施や安全性確保のための取り組みを公開することで、透明性を高める努力が求められます。
また、保管事業者への情報提供も不可欠です。PCB廃棄物の適切な保管・処理方法に関する指導を行うことで、違法な廃棄や保管不備を防止することができます。同時に、保管事業者が抱える処理費用や手続きの負担を軽減するための施策も検討すべきです。
さらに、国や自治体、地域住民、処理業者の間で効果的な協議の場を設け、連携を深めることが必要です。最後に、一般市民に向けた啓発活動も重要です。PCB問題の重要性やリスクを広く理解してもらうことで、社会全体の協力体制を築きやすくなります。
PCB(ポリ塩化ビフェニル)は、その強い毒性が明らかになり、環境や人体に対する深刻な影響が確認されたため、現在では使用が厳格に禁止されています。特に、古い塗膜に残留しているPCBは、取り扱いに細心の注意を払わなければならない有害物質です。
橋梁や鋼構造物に塗られた塗膜には、鉛やクロムとともにPCBが含まれていることがあり、これらは防錆や耐久性向上のために使用されてきましたが、その有害性が指摘されるようになり、慎重な取り扱いが求められています。
PCB含有塗膜の除去作業では、粉塵の飛散を防ぐ湿式工法が一般的に採用されます。湿式工法では、剥離剤を使用して塗膜を剥がし、粉塵を抑制しながら有害物質の拡散を防ぎます。さらに、作業現場全体をシートで覆い、塗膜カスや粉塵が外部に漏れないようにする徹底的な隔離対策が必要です。
国道2号左門橋補修工事では、PCBを含む塗膜が検出されましたが、PCB濃度は低く、鉛が高濃度で含まれていたため、特別管理産業廃棄物として処理されました。湿式工法で塗膜を除去し、粉塵飛散を防ぐため作業場を囲み、作業員には防護服を着用させ、安全対策が徹底されました。
国道2号浜手バイパス高架橋の塗装塗替工事では、溶出濃度の基準内ではあったが高濃度の鉛が含まれていました。そこで工事では湿式工法と適切な剥離剤を使用し、粉塵抑制のために集塵機や排気装置を設置。作業員の安全も確保され、廃棄物は適切に処理されました。
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