ポリ塩化ビフェニルの化学式とは?PCB廃棄物の処理手順 | PCB処理 完全攻略ガイド
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ポリ塩化ビフェニルの化学式とは?PCB廃棄物の処理手順
公開:2023.12.20 更新:2024.09.30PCB(ポリ塩化ビフェニル)はベンゼン環に塩素原子が結合した化合物で、化学式は「C12H10-xClx」と表されます。かつて電気絶縁性や耐熱性を持つために絶縁油や熱媒体として広く使用されていましたが、その有害性が判明し、現在では製造や使用が禁止されています。
近年まで変圧器、コンデンサー、安定器などに使われていましたが、現在は厳格な規制下で管理・廃棄されています。PCB廃棄物は高濃度と低濃度に分類され、それぞれに適した処理手順に従って安全に廃棄さしなければなりません。
目次
化学式から知るポリ塩化ビフェニル(PCB)の基礎知識
PCBは、ポリ塩化ビフェニル(Polychlorinated Biphenyl)の略称で、その特性として電気絶縁性や耐熱性があります。以前は絶縁油や熱媒体として電気機器や機械に広く使用されていましたが、環境への悪影響と健康への潜在的な危険性が判明し、現在では新たな生産は行われていません。以下ではポリ塩化ビフェニルの化学式と、毒性および健康への影響について説明します。
◇PCBの化学式
PCB(ポリ塩化ビフェニル)は、ベンゼン環が2つ結合した有機化合物の一種で、その化学式は一般的に「C12H10-xClx」と表されます。ここで、「x」はベンゼン環に結合した塩素原子の数を表します。具体的なPCBの化学式は、塩素原子の数に応じて異なり、異なるPCB化合物が存在します。
例えば、PCB-1はベンゼン環が2つ結合し、1つの塩素原子を持つPCBであり、その化学式はC12H9Clです。一方、PCB-209はベンゼン環が2つ結合し、9つの塩素原子を持つPCBであり、その化学式はC12H1Cl9です。
PCBは異なる塩素の配置によってさまざまな種類が存在し、これらの異なるPCB化合物は物理的、化学的な特性が異なります。そのため、具体的なPCBの化学式は、そのPCBがどの種類であるかによって変化し、特性の理解や識別に役立ちます。
◇PCBの毒性と健康への影響
PCB自体の急性毒性は比較的低く、そのレベルは衣類の防虫剤と同程度とされています。しかし注意が必要なのは、PCBはその特性から一度自然界に放出されると、分解しにくい特徴があるということです。この性質のため、食物連鎖をとおして長期間にわたって生物や食物内に蓄積し、結果的に人体にも濃縮されることでさまざまな悪影響が懸念されています。
PCBの毒性および健康被害については、以下のような例が挙げられます。
・手足のしびれ
・関節の腫れ
・皮膚や粘膜の色素沈着
・塩素ニキビの発生
・肝機能障害
・長期的な蓄積による発がんのリスク
・内分泌かく乱作用
・ホルモンバランスへの悪影響
・感染症への抵抗力の低下
・胎児や幼児への神経発達への悪影響
上述したように、PCBは長寿命で分解が難しく、過去の不適切な廃棄や使用によって環境中に残存しているため、その影響は現在も続いています。国際的には、PCBの使用や生産に関する規制が進んでおり、適切な廃棄や管理が求められています。
PCBの産業利用されている製品
画像出典:フォトAC
PCBはかつて絶縁体などで幅広く使用されていましたが、その後環境への悪影響が判明し、規制されるようになりました。これまでのあいだ、PCBはどのような製品として利用されてきたのかを解説します。
◇PCBが含まれている製品紹介
PCBが含まれていた主な製品は以下の3つです。
トランス(変圧器)
変圧器は、電気エネルギーを昇圧または降圧して変換する装置で、主に電力供給ネットワークで使用されています。これにより、電力を長距離伝送したり、家庭や事業所での利用に適した電圧に変換することができます。
過去には、PCB(ポリ塩化ビフェニル)が冷却材として使われていました。その理由は、PCBが高い絶縁性と耐熱性を持ち、変圧器内部の温度を効果的に安定させるためです。しかし、PCBが環境に悪影響を与えることが明らかになり、現在では代替冷却材が導入され、安全性が確保されています。
コンデンサー
コンデンサーは、電気エネルギーを蓄積・放出する装置で、2つの導体の間に絶縁体を挟む構造を持っています。これにより、電荷を蓄えることができ、さまざまな電子機器や電力システムで重要な役割を果たしています。
かつてはPCBが絶縁体として使用され、コンデンサーの安定した電気特性を確保していましたが、環境問題が指摘されるようになり、現在ではより安全な材料や技術に置き換えられています。
安定器
安定器は、電圧や電流の変動を抑制し、安定した電力供給を維持するための装置です。蛍光灯や電子機器において、安定した電力を供給するために広く使われています。
かつてはPCBが使用されていましたが、環境への影響が懸念されるようになったため、近年ではPCBを使用しない安定器が主流となり、より安全な技術が採用されています。
◇PCB製品の使用禁止された経緯
PCBはその特性からさまざまな製品に使用されていましたが、その有害性が明らかになってからは製造が中止されています。大きな転機となったのは、1968年のカネミ油症事件です。この事件では食品や飲料などへのPCBの混入が原因で多くの人が健康被害を受けました。
この社会的な問題を受けて、1974年にPCBの製造および使用が全面的に禁止されたのです。
PCB廃棄物の分類と処理手順
PCBの産業廃棄物としての分類とその判別方法、処理手順について詳しく解説します。
◇PCB廃棄物の分類、判別方法のまとめ
PCB廃棄物は、高濃度PCB廃棄物と低濃度PCB廃棄物に分けられ、それぞれに判別方法が異なります。
高濃度PCB廃棄物
1953年から1972年にかけて製造された変圧器やコンデンサーには、絶縁油として高濃度のPCB(が含まれている可能性があります。
この時期に製造された機器が現在も使用されている場合、その機器に取り付けられた銘板を確認することで、PCBが使用されているかどうかを判別できます。銘板には製造年や型番などの情報が記載されており、これを基に適切な処理や廃棄方法を判断することが重要です。
低濃度PCB廃棄物
低濃度PCBは、1990年頃までに製造された電気機器に残存している可能性があるとされています。特に、変圧器のように絶縁油の交換や補充が可能な機器に関しては、1994年以降に製造されたものでメンテナンスが実施されていない場合、PCBの残存リスクは低いと考えられています。
低濃度PCB廃棄物の判別方法としては、絶縁油の交換や補充を行った際に、PCB汚染の有無を確認することが求められます。まず、機器の銘板情報やその背景を確認し、PCBが使用されているかどうかを判断します。
PCBの使用が不明な場合は、絶縁油のPCB濃度を分析し、基準値以下であれば低濃度PCB廃棄物として処理することが可能です。また、メンテナンスが定期的に行われている場合は、その履歴を確認することが重要です。
1994年以前に製造された機器については、絶縁油からサンプルを採取し、PCB濃度を分析することで、汚染の有無を確実に確認することが推奨されます。
◇PCB廃棄物の処理手順
PCBは有害物質であり、適切な処理が不可欠です。PCB廃棄物を安全に処理するためには、厳格な手続きと適切な管理が求められます。以下に、PCB廃棄物の処理方法と手順について簡潔にご紹介します。
1.銘板の確認
機器の銘板情報を確認し、PCBの有無や濃度を確認する。
2.届出書の提出
PCB廃棄物に関する使用届出書、管理状況届出書、廃止届出書を関係機関に提出する。
3.保管
廃棄まで適切に保管し、漏洩や汚染を防止する。
4.処分手続き
処分に向けた手続きを進め、条件に応じて処理料金の軽減(軽減制度の活用)を検討する。
5.JESCOへの運搬
1~4のすべてのプロセスが終了したら、PCB廃棄物を保管場所からJESCOに運搬する。JESCOではPCB廃棄物の収集を行っていないため、PCB廃棄物収集運搬許可業者への委託が必要。
6.処理完了
PCB廃棄物がJESCOに搬入されたのち、2ヶ月以内に処理完了を証明する書類が郵送され、処理が完了。
PCB処理においては、機器の銘板情報を正確に確認し、必要な書類を提出することが重要です。また、PCB廃棄物の適切な保管と運搬も漏洩や汚染を防ぐために注意が必要です。処理手続きは法令や規制に基づいて行われるため、関連する機関との連絡を確保し、指示に従うことが不可欠です。
PCB(ポリ塩化ビフェニル)は、かつて電気絶縁性や耐熱性を持つ有機化合物として広く使用されましたが、その環境への悪影響と健康への潜在的な危険性が判明し、現在では新たな生産は行われていません。PCBの化学式は一般的にC12H10-xClxであり、「x」はベンゼン環に結合した塩素原子の数を表します。PCBは異なる塩素の配置によって異なる種類が存在し、これらは物理的、化学的な特性が異なります。
PCBの急性毒性は低いものの、長期間の暴露によりさまざまな健康被害を引き起こす可能性があります。これには手足のしびれ、関節の腫れ、皮膚や粘膜の色素沈着、肝機能障害、発がんのリスク、内分泌かく乱作用、ホルモンバランスへの悪影響、感染症への抵抗力の低下、胎児や幼児への神経発達への悪影響が含まれます。
PCBはかつて変圧器、コンデンサー、安定器などの製品に使用されていましたが、その有害性が明らかになり、製造が中止されました。1974年にはPCBの製造および使用が全面的に禁止されました。
PCB廃棄物は高濃度と低濃度に分類され、それぞれ異なる判別方法と処理手順があります。適切な処理が必要であり、厳格な手続きと管理が求められます。PCB廃棄物の処理には、銘板の確認、関連書類の提出、保管、処分手続き、JESCOへの運搬、処理完了が含まれます。これらの手順は法令と規制に基づいて行われ、適切な管理が不可欠です。
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