PCB産業廃棄物は赤ちゃんに深刻な悪影響を及ぼす可能性が高く、妊娠期間中と母乳を通じて赤ちゃんに侵入します。PCBに曝露された赤ちゃんは、先天性障害や皮膚疾患、免疫機能の低下などの影響を受ける可能性があります。適切なPCB産業廃棄物の処理と注意が重要です。
目次
PCB 産業廃棄物が生み出す負の連鎖
PCB 産業廃棄物とは、ポリ塩化ビフェニル(PCB)を含む廃棄物のことを指します。耐熱性、絶縁性、非水溶性などに優れた性質を持っているため、変圧器、コンデンサー、安定器などの電気機器用絶縁油や感圧紙、塗料、印刷インキの溶剤などに広く利用されてきました。
しかし、その後、環境に悪影響を及ぼすことが明らかとなり、日本をはじめ、多くの国々で規制や禁止措置の対象とされています。こちらでは、PCB 産業廃棄物が生み出す負の連鎖について、詳しくご紹介いたします。
◇食物連鎖のなかを移動し続けるPCB 産業廃棄物
PCBは1度でも生物の体内に入り込むと、分解されずに残ってしまうという特性を持っています。これらは、大気や水などを通じて世界中に広がっており、多くの野生動物もまた汚染されていることが報告されています。
そのため、PCBはその特性により、食事を通じて食物連鎖の頂点に立つ、人間に影響を及ぼす可能性があります。このため、PCBを体内に溜め込まないようにするためには、摂取するものや摂取の仕方に注意を払うことが大切です。
例えば、汚染されている可能性の低い魚や緑色野菜を摂取したり、魚は加熱調理を行ってから摂取したりすることにより、体内に入り込むPCBの量を減らせることが期待できるでしょう。
なお、PCBは生物の体内だけではなく環境でも蓄積されやすい物質であるため、1度でも環境中に放出されると、環境中に長期間残留してしまいます。このことからも、PCB 産業廃棄物は早急かつ適切な方法による処理が必要であると言えるでしょう。
◇複数の病気にかかる可能性がある
人間にとっても、PCBは非常に有害な物質であるため、人間がそれを大量に摂取してしまった場合、複数の病気につながるおそれがあります。例えば、発疹などの症状が表れる他にも、色素沈着、肝機能障害、免疫機能の低下の可能性、発がん性の疑い、肺炎、ウイルス性の病気にかかりやすくなることなどが挙げられるでしょう。
また、母親を通じて、生まれてくる前の赤ちゃんおよび乳児期の赤ちゃんにまで影響を及ぼしてしまうと言われているため、PCBによる健康リスクを最小限に抑えるためにも、早急かつ適正にPCBの廃棄を行うことが大切です。
PCB 産業廃棄物の赤ちゃんへの侵入経路

画像出典:フォトAC
PCB による影響はさまざまな要因により、生まれてくる前の赤ちゃんおよび乳児期の赤ちゃんにまで及ぶことが報告されています。そのため、今を生きる私たちだけではなく、これから、生まれてくる赤ちゃんや未来の子どもたちのためにも、PCB 産業廃棄物の早急かつ適切な処理への取り組みは非常に大切です。こちらでは、PCB 産業廃棄物の赤ちゃんへの侵入経路について、詳しくご紹介いたします。
◇妊娠期間中でも赤ちゃんの体内へ侵入する
赤ちゃんが生まれてくる前、つまり、母親の妊娠期間中にお腹の中の赤ちゃんの体内にPCBが侵入する可能性があることが分かっています。実際に90%を越える方の血液中からPCB類がみつかっており、妊娠期間中の場合は胎盤を通して、生まれてくる前の赤ちゃんの体内にPCBが侵入する可能性があることが報告されています。
なお、過去に行われた研究では、参加した119名のうち、全ての妊娠期間中の方の血液および母乳からPCB類が検出された事例もありました。
◇母乳を通して赤ちゃんの体内へ侵入する
赤ちゃんの体内にPCBが侵入する経路として、胎盤の他にも、母乳を通しての侵入が挙げられます。赤ちゃんにとって、母乳は非常に大切な栄養源のひとつではありますが、母乳にPCBが検出された場合、母乳を通して、赤ちゃんの体内にPCBが侵入する可能性があるでしょう。
過去に行われた研究では、血液より母乳のほうに多くのPCB類が含まれていることが結果として、明らかとされており、その研究によると、血液と母乳に含まれるPCB類の量には明らかな比例関係にあるとされています。つまり、血液に含まれているPCB類の量が多い方の場合、それに比例して、母乳に含まれているPCB類の量もまた多い傾向にあることを指します。
◇PCBが赤ちゃんに与える影響
母親がPCBに曝露された場合、胎児や新生児に深刻な影響を及ぼすことがあります。以下に、PCBが赤ちゃんに与える影響を説明します。
PCBは胎児の発育に悪影響を与え、先天性の障害を引き起こす可能性があります。これには、心臓の異常、脳の発達に関する問題、口唇口蓋裂などが含まれます。また、皮膚に異常な症状が現れることがあります。これには、発赤、発疹、かゆみ、湿疹、膿が出るなどが含まれます。特に、乳幼児や幼少期の皮膚疾患は、子供の生活の質に大きな影響を及ぼすことがあります。
PCBは免疫系にも悪影響を及ぼす可能性があり、子供が感染症に対する免疫力を低下させることがあります。その結果、子供はより多くの健康問題に直面する可能性があります。
PCBに曝露された子供は、これらの影響に長期的に苦しむ可能性があるため、母親が妊娠中にPCBに曝露しないように注意が必要です。また、既にPCBに曝露された子供に対しては、専門医の治療とサポートが必要です。
PCB 産業廃棄物を拡散しないために期限内に処理しよう
PCBは1度でも生物の体内に入り込むと、分解されずに残ってしまうという特性を持っています。そのため、適切な方法による処理が行われなかった場合、さまざまな要因により、食物連鎖の頂点に立つ、人間に大きな影響を及ぼす可能性があると考えられるでしょう。
こちらでは、低濃度PCB 産業廃棄物の処理期限や高濃度PCB 産業廃棄物の処理期限について、詳しくご紹介いたします。
◇低濃度PCB 産業廃棄物の処理期限
低濃度PCB 産業廃棄物の処理期限は、令和9年(2027年)3月31日までとされています。そのため、PCB排出事業者はこの日までに全てのPCB産業廃棄物の処分を行わなければなりません。なお、処理期限間近となると、予約状況が混雑する可能性があるため、早めに予約を行っておくと安心でしょう。
◇高濃度PCB 産業廃棄物の処理期限
高濃度PCB 産業廃棄物の処理期限は、変圧器やコンデンサーが令和4年(2022年)3月31日に、安定器や汚染物質が令和5年(2023年)3月31日に全てのエリアで終了しました。なお、処理期限内に処理を行っていなかった場合や改善命令に従わない場合、罰則や罰金が課されることとなります。
PCB(ポリ塩化ビフェニル)産業廃棄物は、その特性から食物連鎖を通じて人間にも悪影響を及ぼす可能性があります。PCBは生物体内で分解されず、大気や水を通じて広がり、野生動物にも広く影響を与えています。食物連鎖を通じて人間にも摂取され、健康へのリスクを引き起こす可能性があります。
特に妊娠期間中や母乳を通じて赤ちゃんにもPCBが影響を与え、先天性の障害や免疫機能の低下などが懸念されます。そのため、PCB産業廃棄物の適切な処理が重要で、低濃度PCB産業廃棄物は2027年3月31日までに、高濃度PCB産業廃棄物も期限内に処理される必要があります。これにより、PCBの拡散を防ぎ、健康への影響を最小限に抑えることが目指されています。