絶縁油は電気機器の絶縁や冷却に用いられ、劣化により定期的な交換が必要です。一方、絶縁油がPCB廃棄物に該当するかどうかは、PCB濃度が0.5㎎/㎏以下であるかが基準で、この基準を超える場合は特別な処理が必要です。こちらでは、絶縁油の重要性とPCB廃棄物の判定基準、適切な処理方法について解説します。
目次
絶縁油とは?劣化するため定期的な交換が必要
絶縁油とは電気機器の絶縁と発生熱を冷却するために用いられる油であり、変圧器や回路遮断器、コンデンサー、安定器などに採用されています。絶縁油は長年使い続けることで絶縁や冷却機能が低下していくことから、定期的なメンテナンスと交換を行うことが重要です。
◇絶縁油とは
絶縁油は可燃性の油であり、電気機器などの絶縁と発生した熱を冷却することを目的とした油の総称です。変圧器や回路遮断器、コンデンサー、安定器などに採用されています。特に変圧器や蓄電器などの電気機器内は、絶縁油を満たした状態とすることで熱を下げる仕組みとなっています。
また変電設備においては漏電を防ぐために高圧の電線やコイルを絶縁油で包んでおり、絶縁油は安全な変電設備において欠かせない役割を担っているといえるでしょう。
◇絶縁油の交換が必要な理由と目安
電気機器の絶縁や冷却に使用される絶縁油は、長期間交換することなく使用していると劣化が進んでしまいます。その結果、絶縁性能が低下したり、最悪の場合は電気機器自体の故障に繋がり機器本体を更新する必要が出てくる場合もあります。
そのため絶縁油の劣化状態については定期的なメンテナンスを行い、必要に応じて絶縁油の交換することが重要です。そして10年を目安とした定期的な絶縁油のメンテナンスを施すことで、電気機器は通常であれば15年から20年とされる機器寿命を超えて、より長く安全に使い続けることが可能となるでしょう。
また絶縁油の交換は機器本体の更新と比較して安価なことから、電気機器を維持し続ける上でのコスト面においても大きな効果が期待できます。
PCB廃棄物として処理が必要な絶縁油の基準と判別方法

画像出典先:三美興産株式会社
PCB廃棄物として処理が必要な絶縁油の基準はPCB濃度が0.5㎎/㎏以下であるかが判断基準となります。また絶縁油の縁油がPCB汚染されているかについての判別は、電気機器の製造年や採取した絶縁油のPCB濃度を測定することで判別が行われます。
◇PCB廃棄物か否かの判定基準
PCB廃棄物か否かの判断基準として、廃重電機器等については機器の内部に封入された絶縁油中のPCB濃度が0.5㎎/㎏以下であるかが判断基準となっています。PCB濃度が0.5㎎/㎏以下であればPCB廃棄物には該当せず、普通産業廃棄物として扱われます。
一方でこの基準となるPCB濃度が0.5㎎/㎏を超える絶縁油が封入された廃重電機器等に関しては、廃油のみでなく廃油によって汚染された周辺部材も一式PCB廃棄物として扱う必要があります。
そのため汚染された容器や鉄心、コイル、鉄くず、絶縁紙、押さえ棒などについても全てPCB廃棄物として扱わなければならない点に注意が必要です。またその他の金属くずや陶磁器くずの卒業基準においても、0.5㎎/㎏を超える絶縁油が付着していないかが判断基準として設定されています。
◇絶縁油の判別方法
電気機器に使用されている絶縁油がPCB汚染されているかについての判別は、電気機器の製造年によって大まかに判別することが可能です。そのため判別をするには電気機器に取り付けられた銘板に記載された製造年を確認することが重要です。
まず絶縁油の採取が可能である変圧器等の機器は、1993年以前に製造されたものについてはPCB汚染の可能性があります。また1994年以降に製造されたものについては、絶縁油の交換や継ぎ足しによってPCB汚染されている可能性もあり正確には判別が難しいでしょう。
そのため正確な絶縁油の判別を行うには、停電時に電子機器から採取した絶縁油をPCB濃度を測定する必要があります。次に絶縁油封じ切り機器であるコンデンサーには、1990年以前に製造されたものについてはPCB汚染の可能性があり、1991年以降に製造されたものについてはPCB汚染の可能性はありません。
そしてコンデンサーの廃棄をする場合には、穴を開けて絶縁油を採取しPCB濃度を測定するか、銘柄情報などから高濃度でないことが明らかな場合には低濃度PCB汚染物とみなして処分することが可能とされています。
絶縁油がPCB廃棄物の場合の処理方法
絶縁油は、消防法では「第四類・第三石油類」の可燃性液体に分類されます。貯蔵や取扱の容量によって規定され、水溶性の場合は4,000L、非水溶性の場合は2,000Lが指定数量とされています。これを超過する場合は、一般危険物取扱所として扱わなければなりません。
絶縁油を変圧器内部の冷却・絶縁に使用する場合は、電気設備としての扱いとなり、消防法上の危険物としては扱われませんが、消防機関によっては特別な指導があることもあります。絶縁油には有害成分であるPCBが含まれる場合があり、適切な処理が必要です。不適切な処分は違法行為となり、罰金などの刑罰が科される可能性があります。
◇低濃度PCBの場合
PCB濃度が0.5 ㎎/㎏を超え、5,000 ㎎/㎏以下である機器は低濃度PCB含有廃棄物として扱われます。また紙くずや木くず、繊維くず、汚泥、廃プラスチック類等の可燃性があるものは0.5 ㎎/㎏を超え、100,000 ㎎/㎏以下のものがPCB含有廃棄物として扱われます。
そしてこれらの低濃度PCB含有廃棄物は、認定を受けた処理施設等で焼却処理がなされます。
◇高濃度PCBの場合
PCB濃度が5,000㎎/㎏を超える機器は高濃度PCB含有廃棄物として扱われます。高濃度のPCB廃棄物は、100%政府出資の施設であるJESCOが全国5か所に設置したPCB廃棄物処理施設で処理されます。この施設での処理が必要です。高濃度のPCB廃棄物は特別な扱いが必要であり、外部の専門施設で処理されることが一般的です。
◇PCB廃棄物に該当しない場合
絶縁油がPCB廃棄物に該当しないことを確認するためには、製造メーカーに問い合わせるか、絶縁油の分析を行いPCB濃度が0.5mg/kg以下であることを確認する必要があります。該当しない場合は、通常の産業廃棄物として処理することができますが、処理業者に書面で提供する情報が必要です。
絶縁油は電気機器の絶縁や発生した熱の冷却に用いられ、変圧器や回路遮断器、コンデンサーなどの様々な電気機器に広く採用されています。長期間の使用により絶縁油は劣化し、その結果絶縁性や冷却効果が低下します。そのため定期的な交換が必要であり、絶縁油のメンテナンスは電気機器の安全性や信頼性を保つために重要です。
PCB廃棄物として処理が必要な絶縁油の基準は、PCB濃度が0.5㎎/㎏以下であるかどうかです。PCB濃度がこの基準を超える場合、絶縁油は特別な処理が必要なPCB廃棄物と見なされます。絶縁油がPCB廃棄物かどうかを判断するには、電気機器の製造年や採取した絶縁油のPCB濃度を測定することが一般的です。
絶縁油の適切な管理と処理は、環境への影響を最小限に抑えるだけでなく、法規制や安全基準に適合するためにも重要です。安全かつ効果的な絶縁油の管理には、定期的なメンテナンスと交換、PCB濃度の測定と適切な処理が含まれます。これらの手順を遵守することで、電気機器の寿命を延ばし、安全性を確保することができます。