低濃度のPCB廃棄物は、通常は濃度を確認して処理しますが、「みなし処理」では濃度確認を省略し、適切な保管と自治体への報告が必要です。特定の機器や製造年に基づいて適用され、手続きや保管方法が決まります。専門業者による収集や運搬、環境大臣認定の処理施設での処分が必要で、保管にも基準があります。
目次
低濃度PCB廃棄物のみなし処理とは?

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本来、PCB廃棄物はPCB濃度を確認してから処分を行いますが、PCB濃度を確認せずに低濃度PCBを含有しているとみなして処理することも可能です。みなし処理を行う場合は、廃棄物を適正に保管し、毎年6月30日までに自治体に報告する必要があります。みなし処理は、分析の省略とコスト削減ができるのがメリットです。
◇低濃度PCB廃棄物とみなした処理
PCB濃度を確認せずに、低濃度PCBを含有しているとみなして処理することを、みなし処理といいます。ただし、みなし処理が適用されるのは、使用中の機器と、特定の期限前に製造された機器のみです。
みなし処理をする場合は、廃棄物を適正に保管し、保管場所を管轄する自治体に毎年6月30日までに報告しなくてはいけません。
◇本来は絶縁油で濃度を調査
PCB含有電気工作物は、適正な保管および処理が必要で、本来は絶縁油で濃度を調査してから処理を行います。参考までに、変圧器やコンデンサに使用されている絶縁油を処理する流れを、ご紹介します。
まずはPCB混入の可能性の有無を確認するために、絶縁油の濃度を調査します。調査方法は、定量分析法と迅速判定法のふたつです。0.5mg/kgを超えるPCBが検出された場合は、PCB廃棄物と判定します。みなし処理の場合はこの分析を行わないため、分析をする手間が省け、分析にかかる費用もかかりません。
低濃度PCB廃棄物のみなし処理が認められるケースとは?

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低濃度PCB廃棄物のみなし処理が認められているのは、封じ切りのコンデンサや1990年以前の封じ切り機器や小型変圧器に限定されています。その理由は、以下のとおりです。
◇封じ切りのコンデンサなど
絶縁油の採取口が設けられていない封じ切り機器は、絶縁油を採取するためには穴を開けなくてはいけません。しかし、穴を開けると使用不可となるため、PCB汚染の疑いがある機器としてみなし処理が認められています。
みなし処理で処理することを予定していても、管轄する自治体への届出は必要です。なお、使用を終えて廃止した自家用電気工作物を再び接続することは、電気事業法により禁止されています。
◇1990年以前の封じ切り機器や小型変圧器
製造年からPCB汚染が疑われていても、高濃度 PCBに該当しないとことが明らかになった封じ切り機器や小型変圧器についても、みなし処理が認められています。1990年(平成2年)以前に製造された封じ切り機器や小型変圧器で、銘板情報などから高濃度PCBでないことが確認できれば、PCB濃度の分析値がなくても低濃度PCB廃棄物とみなし処分することが可能です。
具体的な処理方法は、無害化処理認定事業者などの許可を得た業者に相談できます。製造年からみなし処理する予定の機器でも、保管基準に従った適正な保管と、管轄する自治体への届出が必要です。
◇低濃度PCB汚染の可能性がある代表的な機器類
低濃度PCB廃棄物のみなし処理が認められる場合について説明します。まず、低濃度PCB汚染の可能性がある機器を特定することが重要です。低濃度PCB廃棄物とは、PCB(ポリ塩化ビフェニル)が非常に低い濃度で含まれているものを指し、規定された基準値以下であれば、特定の条件下で簡易的な処理が認められることがあります。
低濃度PCB廃棄物が発生する可能性のある代表的な機器としては、変圧器やコンデンサに加えて、安定器や電力用ケーブルも挙げられます。特に、蛍光灯の安定器は低濃度PCB汚染の可能性が高い機器の一つです。安定器内部には、点灯時の電流を調整するための部品があり、その部品に使用される絶縁材料にPCBが含まれている場合があります。このような安定器は、特に古い建物や施設に多く使用されており、廃棄時には適切な確認が必要です。
また、電力用ケーブルも低濃度PCB廃棄物となる可能性があります。電力ケーブルに使用されていた絶縁材や冷却剤に含まれていたPCBが、時間の経過や使用環境によって劣化し、低濃度で検出されることがあります。したがって、これらのケーブルについても注意が必要です。
これらの機器を処分する際には、廃棄物のPCB濃度が基準値以下であることを確認する必要があります。検査結果が基準を満たしていれば、簡易的なみなし処理が認められることがありますが、必ず適切な検査と手続きが求められます。安全かつ確実な処理を行うためには、専門業者による分析や相談を通じて、慎重に進めることが重要です。
低濃度PCB廃棄物の処理手続き

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低濃度PCB廃棄物を安全にかつスムーズに処理をするためには、処理フローを自前に確認しておくことが大切です。低濃度PCB廃棄物を処理するためには、都道府県知事または政令で定める市長に届出をします。使用中の電気機器が低濃度PCB含有電気工作物に該当することが判明した場合も、管轄する産業保安監督部に届出を行わなくてはいけません。届出には、経産省が定める様式が必要です。
◇低濃度PCB廃棄物の処理フロー
PCB廃棄物の処理フローは、下記のとおりです。
届出を行う
保管と処分の状況について、毎年6月末までに都道府県知事(または政令で定める市長)に届出を行います。届出様式は、都道府県のホームページまたは環境省のホームページから入手することが可能です。
適正に保管する
処分するまでの期間、PCB廃棄物を適正に保管・管理しなければなりません。PCB廃棄物にはPCB廃棄物であることを示すラベルの貼り、PCBが漏洩した際は処置も必要です。PCB廃棄物を保管する事業者は、各事業場に資格要件を満たした特別管理産業廃棄物管理責任者を配置します。
収集・運搬
PCB廃棄物の収集運搬業許可を取得している業者に、収集・運搬を委託します。搬出の際は立会いが必要です。
無害化処理事業者への処理委託
無害化処理事業者は、環境省の認定を受け、PCB廃棄物の無害化に特化した設備や技術を備えた専門業者です。これらの事業者は、高温焼却や化学分解などの高度な処理手法を用いて、廃棄物中のPCBを分解し、環境や人体への影響を最小限に抑える処理を行います。
低濃度PCB廃棄物を処理する際には、事業者の認定状況や処理能力を確認することが重要です。適切な処理が行われるかどうかを検討し、信頼できる事業者に依頼することで、確実に処理を進めることができます。また、無害化処理事業者に委託することによって、企業は廃棄物処理に関する法的な責任を適切に果たすことができるため、法的なリスクを避けることが可能です。
処理完了後には、無害化処理が完了したことを証明する「処理完了証明書」が発行されます。この証明書は、廃棄物が安全に処理されたことを示す重要な書類として活用でき、企業にとっての信頼性を高めます。処理を依頼することで、企業は法令遵守を実現し、同時に環境保全にも貢献することができるため、社会的責任を果たす一環となります。
処分
低濃度PCB廃棄物は、環境大臣認定の無害化処理認定施設や都道府県市長許可施設で処分します。
◇必要書類
PCB含有電気工作物に関して、2001年(平成13年)7月にPCB特措法が施行されたことを受けて、同年10月に報告規則を改正し、PCB含有電気工作物に関する届出制度を導入されました。
使用中の電気機器が低濃度PCB含有電気工作物に該当することが確認された場合は、電気事業法の電気関係報告規則に基づき、該当する場所を管轄する産業保安監督部に速やかに届出る必要があります。
低濃度PCB含有電気工作物の届出には、経産省が定める様式を使用します。設置者の氏名や住所の変更、事業場の名称や所在地の変更、機器の廃止、または事故が発生した場合も同様に、届出が必要です。
低濃度PCB廃棄物の保管と処理方法

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低濃度PCBの収集運搬、処理は、許可を得た専門業者に依頼します。専門業者が収集に来るまでは、保管基準を守り適切に保管しておくことも重要です。
◇PCBの含有を確認
低濃度PCB廃棄物の保管と処理を適切に行うための第一歩は、PCBの含有を確認することです。PCBの確認作業は、廃棄物の性質を正確に把握し、その後の適切な処理方法を選択するために不可欠です。PCBはその有害性から、環境汚染防止のために厳格な規制が適用されています。そのため、PCBの含有を見落とすことは、法律違反や環境リスクに直結する可能性があるため、慎重な確認が必要です。
PCBの含有確認は、専門的な検査を通じて行います。まず、廃棄物がPCBを含んでいる可能性があるかを確認します。特に、古い変圧器やコンデンサ、安定器などは、PCBを含んでいる可能性が高い機器です。次に、これらの機器から試料を採取し、専門の分析機関に依頼してPCB濃度を測定します。
PCB濃度の分析では、その濃度が法令で定められた基準値を超えているかどうかが判定されます。検査の結果、PCBが含まれていると確認された場合、廃棄物は「低濃度PCB廃棄物」または「高濃度PCB廃棄物」に分類されます。低濃度PCB廃棄物と判定された場合でも、法的規制に基づいて厳密な保管と処理が求められます。
PCBの含有確認は、単なる廃棄物管理にとどまらず、環境保全や法令遵守の観点からも極めて重要な作業です。確認作業を怠ると、不適切な廃棄物処理による環境汚染や、法的責任を追及されることなど、深刻な問題を引き起こす可能性があります。そのため、企業や自治体は、PCBの含有確認を徹底し、適切な対応を行う必要があります。
◇専門業者へ処理・収集運搬を依頼
低濃度PCB廃棄物の処理が行えるのは、環境大臣による認定施設または都道府県知事による許可施設のみです。廃棄物処理法第15条の4の4の第1項に基づく無害化処理認定事業者の一覧を確認し、処理を依頼します。
収集運搬に関しても、搬入できる事業者が決まっています。東京PCB処理施設にPCB廃棄物を搬入できる収集運搬事業者一覧と北海道PCB処理施設にPCB廃棄物を搬入できる収集運搬事業者一覧を確認し、収集運搬を依頼します。
◇収集運搬までは適切に保管
専門業者が収集に来るまでは、低濃度PCB廃棄物を廃棄物処理法施行規則第8条の13で定める保管基準に従って保管しなくてはいけません。保管基準は以下のとおりです。
・周囲に囲いがある場所を選ぶ
・見やすいところに掲示板を設置する
・飛散、流出、地下浸透、悪臭発散を防止するための措置を講じる
・他の物質が混入しないように仕切りを設けるなどの措置を講じる
・容器に入れて密封するなど、揮発を防止するために必要な措置を講じる
・高温にさらされないように必要な措置を講じる
・腐食を防止するために必要な措置を講じる。
・保管施設ごとに特別管理産業廃棄物管理責任者を配置する
◇適正な処理のための委託先選定
収集運搬の委託
低濃度PCB廃棄物の運搬は、都道府県または政令市の許可を受けた収集運搬業者に委託する必要があります。また、一部の無害化処理認定事業者では、収集運搬と処分を一括で対応している場合もあるため、依頼の際には事前に確認することが重要です。
無害化処理事業者への処理委託
低濃度PCB廃棄物は、環境大臣の認定を受けた無害化処理認定業者、または都道府県・政令市の許可を得た民間処理業者に委託して適正に処理します。
ただし、事業者によって処理可能な廃棄物の種類が異なるため、廃電気機器などの処理を依頼する際は、対応可能かどうか事前に確認することが重要です。適正な処理を行うためにも、信頼できる事業者への委託が不可欠です。
PCB処理に対応している丸両自動車運送を紹介

画像出典:丸両自動車運送
PCB廃棄物の処理には、専門的な知識と厳格な基準が求められます。丸両自動車運送は、全国対応の収集運搬体制を整え、高濃度・低濃度PCB廃棄物の適正処理をサポートする運送業者です。
専門資格を持つ作業従事者が、安全管理を徹底しながら確実な運搬を実施しています。そして他社では対応が難しいケースにも柔軟に対応し、最適な処理方法を提案しています。
会社名 | 丸両自動車運送株式会社 |
所在地 | 静岡県静岡市清水区横砂西町10番6号 |
電話・FAX番号 | TEL:054-366-1312 FAX:054-366-1338 |
◇全国対応の収集運搬体制
丸両自動車運送株式会社は、47都道府県で収集運搬の許可を取得し、全国各地からのPCB廃棄物の収集・運搬に対応しています。高濃度・低濃度PCBを問わず、安全かつ適正な方法での輸送を行い、多くの事業者から信頼を得てきました。
また、少量のPCB廃棄物を保管する事業者向けには、複数の処分機器を1台の車両に混載することで、効率的かつコストを抑えた運搬を実現しています。これにより、処分コストの負担を軽減しながら、多様な運搬条件にも柔軟に対応できる体制を整えてきました。
さらに、運搬中の安全対策も徹底しており、GPS装置による車両の位置管理や経路確認を行っています。リアルタイムで車両の動きを監視することで、万が一の盗難や流出による環境汚染のリスクを最小限に抑えるための対策を講じています。
また、専用車両の定期点検や作業従事者への安全教育を強化し、事故の未然防止にも努めています。
◇豊富なPCB廃棄物処理実績
全国の多種多様なPCB廃棄物に対応し、特別管理産業廃棄物を含むさまざまな産業廃棄物の収集・運搬を行ってきました。各地の処分施設と密接に連携し、常に最新の情報を共有することで、適正かつコストを抑えた処理方法を提案することが可能です。
特に、「他社では対応が難しいと断られた」「古くて種類が分からない」といった廃棄物にも柔軟に対応できます。長年の経験と専門知識を活かし、安全かつスムーズな処理をサポートが可能です。
◇専門資格を持つ作業従事者による安全な対応
PCB廃棄物の収集・運搬を行う作業従事者に対し、(財)日本産業廃棄物処理振興センターの「PCB廃棄物の収集運搬作業従事者講習会」を受講させ、修了証を取得した者のみが作業を担当しています。これにより、高濃度・低濃度を問わず、PCB廃棄物の適正な取り扱いが可能となり、安全かつ確実な運搬を実現しています。
また、運搬中のリスクを最小限に抑えるため、専用車両の管理や厳格な安全対策を徹底。GPSを活用した車両の位置管理や緊急時対応マニュアルの整備により、万が一の事故や流出リスクにも備えています。専門知識を持つスタッフによる丁寧な対応で、排出事業者が安心して依頼できる体制を構築しています。
低濃度のPCB廃棄物は、通常はPCBの濃度を確認してから処理されますが、特定の条件下ではPCB濃度を確認せずに処理できる「みなし処理」が認められています。この場合、適切な保管と自治体への定期的な報告が必要で、省力化とコスト削減がメリットです。
特定の機器や製造年に基づいてみなし処理が適用され、処理のための手続きや保管方法が定められています。また、専門業者による収集や運搬、環境大臣認定の処理施設での処分が必要で、保管にも基準があります。