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PCB根絶に向けて!PCB産業廃棄物処理のこれまでと政府の処理方針 | PCB処理 完全攻略ガイド

PCB(ポリ塩化ビフェニル)処理

PCB根絶に向けて!PCB産業廃棄物処理のこれまでと政府の処理方針

PCB(ポリ塩化ビフェニル)処理

公開:2024.03.25 更新:2024.03.25

PCB(ポリ塩化ビフェニル)廃棄物の処理は日本において重要な課題となっています。その適切な処理に向けて、政府は長年にわたり様々な取り組みを行ってきました。民間主導の施設設置やPCB特別措置法の制定など、これまでの取り組みを振り返りながら、政府のPCB産業廃棄物処理における方針に迫ります。

PCB廃棄物処理が停滞していた日本

PCB廃棄物は、人工的に作られた化学物質であるポリ塩化ビフェニル(Poly Chlorinated Biphenyl)を含む廃棄物のことです。PCBは化学的に安定している特性を活かして、電気機器の絶縁油、熱交換器の熱媒体、ノンカーボン紙などに利用されてきました。

しかし、PCBは毒性が強いため、PCB廃棄物は特別管理産業廃棄物に分類されます。日本では、民間がPCB廃棄物の焼却処理施設の設置を試みたものの、操業に至らなかった過去があります。

そのため、PCB廃棄物処理が停滞し、未処理のまま30年以上が経過しました。さらに、約11,000台の変圧器やコンデンサーが行方不明となり、環境汚染の懸念が生じたことが背景としてあります。

政府のこれまでの取り組み

画像出典先:JESCO

PCB廃棄物の処理体制確立に向け、政府は長い歴史の中で様々な取り組みを行ってきました。これには、民間主導の施設設置の試みやPCB特別措置法の制定、そして中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)による処理施設の整備などが含まれます。その過程での政府の役割や施策について、以下で解説します。

◇PCB製造中止

1968年(昭和43年)にカネミ油症事件が起こり、PCBの毒性が社会問題となりました。これを受けて、当時の通商産業省(現在の経済産業省)の行政指導に基づき、1972年(昭和47年)にPCBの製造が中止されました。

翌年の1973年(昭和48年)には化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律が制定され、1974年(昭和49年)6月からPCBの製造や輸入が禁止されています。1976年(昭和51年)10月には電気事業法も改正され、PCBを使用した電気工作物の新規設置が禁止されましたが、既に設置されていたPCB使用の電気工作物については、適切な管理の下にあるものに限り、引き続き使用が認められています。

◇JESCOによる処理体制の整備

長期保存されたPCB廃棄物が適切な方法で処理されるように、2001年(平成13年)6月にはPCB特別措置法が制定され、翌月の7月から施行されました。PCB特別措置法の施行により、国は中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)を通じて、PCBの適正な処理を推進しました。

JESCOは拠点的な処理施設を全国5箇所に整備しました。具体的には、平成16年に北九州で処理施設の操業を開始しました。この施設は、長期間にわたって保管されていたPCBの処理を行う拠点となりました。JESCOの施設整備により、紛失や漏洩による環境汚染の懸念が解消され、安全かつ適正なPCBの処理が確保されました。

政府のPCB産業廃棄物に関する基本的な処理方針

PCB廃棄物を適切に処理するためには、政府の基本的な処理方針を理解しておくことも重要です。政府のPCB産業廃棄物に関する基本的な考え方と、ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基本計画の内容は次のとおりです。

◇PCB廃棄物処理に関する政府の基本的な考え方

PCB廃棄物は、その保管事業者が責任を負い確実かつ適正に処理しなければならないため、事業者が自己処理するか、処分業者に委託しなくてはいけません。高濃度PCB産業廃棄物と低濃度PCB廃棄物に関する政府の基本的な考え方は、以下のとおりです。

高濃度PCB産業廃棄物

国と地方公共団体が連携し、JESCOの拠点的広域処理施設を活用し処理を推進していくこととします。

低濃度PCB廃棄物

環境大臣の無害化処理認定制度や都道府県の特別管理産業廃棄物処分業者の許可制度を活用し、民間事業者による処理体制を充実させ、低濃度PCB廃棄物の処理を推進していくこととします。

◇ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基本計画

ポリ塩化ビフェニル(PCB)廃棄物処理基本計画は、高濃度PCB廃棄物の処理の継続と広域処理の実施を目的としています。具体的には、以下の内容が含まれます。

・JESCOが高濃度PCB廃棄物の処理を担当し、低濃度PCB廃棄物は民間事業者が処理することが定められています。

・PCB特別措置法に基づき、処分期間または特例処分期限内に処分委託を行うことが義務付けられています。

・確実かつ適正な処理を実現するために、計画的な推進が行われるとともに、必要な措置が取られます。

・処理施設の整備や処理の適正性を確保するための体制が整備されます。

・政府は保管事業者として、PCB廃棄物の確実かつ適正な処理のために必要な措置を実行します。

これにより、PCB廃棄物の処理が適切かつ効率的に行われ、環境への影響を最小限に抑えることが目指されています。

PCB処理で重要なPCB特別措置法の概要と改定ポイント

PCB廃棄物はPCB特別措置法に基づき、期限内に適切な方法で処理しなくてはいけません。PCB特別措置法は2016年(平成28年)に改正されています。こちらでは、PCB特別措置法の概要と改正ポイントをご説明いたします。

◇PCB特別措置法とは

ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法のことで、2001年(平成13年)6月22日に公布され、同年7月15日から施行されました。改正前は、処分期限を施行後15年にあたる2016年(平成28年)7月までとし、PCB廃棄物の譲り渡しおよび譲り受けも改正前から原則禁止されています。

処分期限は、高濃度PCB廃棄物や使用製品については2022年3月31日(変圧器・コンデンサーなど)、2023年3月31日(安定器や汚染物など)、低濃度PCB廃棄物や使用製品については2027年3月31日とされていました。

PCB特別措置法により、PCB廃棄物の適正な管理と処理が促進され、環境への影響が最小限に抑えられることが目指されています。

◇PCB特別措置法の改正ポイント

PCB廃棄物の処理を完了する期限を厳守するために制度的措置を講じる目的として、PCB特別措置法は2016年(平成28年)に改正されました。改正の主なポイントは、次のとおりです。

・高濃度PCB廃棄物は基準によって定義され、高濃度PCB廃棄物、その他のPCB廃棄物(低濃度PCB廃棄物)、および高濃度PCB使用製品に分類されました。
・高濃度PCB廃棄物については、計画的な処理完了期限の1年前までに処分することが義務付けられました。
・高濃度PCB使用製品のうち、電気事業法の電気工作物に該当するものは、措置が取られることになりました。
・高濃度PCB使用製品(電気事業法で規定する電気工作物は含まれません。)がPCB特措法の対象に追加され、PCB廃棄物と同等に取り扱われることが定められました。
・高濃度PCB廃棄物は、省令に特例がある場合を除き、保管場所の変更が禁止されました。(JESCOの各事業エリア内での移動は、省令によって特例として認められています)
・すべてのPCB廃棄物の処分が完了した時点、またはすべての高濃度PCB使用製品(電気事業法で規定する電気工作物は含まれません。)の廃棄が完了した時点で、その旨を届け出ることが求められます。
・高濃度PCB使用製品(電気事業法で規定する電気工作物は含まれません。)の廃棄の見込みに関しても届け出が必要です。
報告の収集および立ち入り検査の権限が強化されました。

◇PCB特別措置法の改定に合わせて基本計画も変更

ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基本計画は、PCB廃棄物の処理事業の基本に関わる計画を定めるものです。PCB特別措置法の改正に伴い、ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基本計画も2019年に変更されています。具体的な変更内容は以下のとおりです。

高濃度PCB廃棄物の処理期限変更

コンデンサやトランスなどの廃棄物については、JESCO北海道事業所の第一施設で処理可能なものについては、令和4年3月31日までの処理期限とし、北海道から長野県までの特定区域でのみ保管場所の変更が可能です。

一方、安定器やその他の汚染物については、JESCO北海道事業所の第二施設で処理可能なものについては、令和5年3月31日までの処理期限とし、これに埼玉県から神奈川県までの特定区域でのみ保管場所の変更が認められます。

なお、低濃度PCB廃棄物の処理期限については、変更はありません。

低濃度PCBの濃度範囲が広がる

これまで高濃度PCB廃棄物に分類されていた、PCB濃度0.5%を超えて10%以内の可燃性廃棄物が、低濃度PCB廃棄物に分類されるようになりました。これにより、処分方法の規制が緩和され、処分期限も延長されます。

低濃度PCB廃棄物の焼却・無害化処理温度の条件が緩和

焼却・無害化処理温度は原則1,100℃以上でしたが、850℃以上に緩和されました。新たに低濃度PCB廃棄物に分類される低濃度PCB廃棄物に関しては、従来どおり1,100℃以上です。これにより、認定施設数の増加が期待されます。


日本では、長年にわたりPCB廃棄物処理が滞ってきました。PCBはその高い毒性から特別管理産業廃棄物に指定され、その適切な処理が喫緊の課題となっています。政府はこれに対処するため、民間主導の施設設置やPCB特別措置法の制定などの様々な取り組みを行ってきました。

その中で、中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)による処理施設の整備が行われ、特に高濃度のPCB廃棄物に対する処理が焦点となりました。政府の取り組みにより、処理施設の整備が進み、適切なPCB廃棄物の処理が確保されました。

さらに、PCB特別措置法の改定に伴い、処理期限や処理条件が変更されました。これにより、低濃度PCB廃棄物の処理がより柔軟に行われることが期待されます。総じて、政府の取り組みにより、PCB廃棄物の処理が適切かつ効率的に進むことで、環境への悪影響を最小限に抑えることが可能となるでしょう。

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