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PCBなど有害物質を含む産業廃棄物処理の難しさと日本の対策とは? | PCB処理 完全攻略ガイド

PCB(ポリ塩化ビフェニル)処理

PCBなど有害物質を含む産業廃棄物処理の難しさと日本の対策とは?

PCB(ポリ塩化ビフェニル)処理

公開:2024.11.26 更新:2024.11.26

PCB処理

ポリ塩化ビフェニル(PCB)は、不燃性と絶縁性が高い人工化合物です。その特性から、過去に電気機器や工業用途で広く使用されてきましたが、毒性や環境汚染リスクが明らかになり、現在は厳しく規制されました。

PCBは化学的に安定で分解されにくく、環境中や生物の体内に蓄積し、健康被害を引き起こすことが特徴です。日本では、1972年に製造と輸入が禁止され、使用済みPCBの適切な処理が進められています。

特に高濃度PCB廃棄物は専用施設で処理され、低濃度廃棄物についても各種処理方法が開発される一方で、技術的課題やコスト、地域住民の理解が求められています。

有害物質の一つであるPCBとは?

ポリ塩化ビフェニル(PCB)は、かつてさまざまな用途で広く使用されていた人工化合物ですが、毒性の高さや環境汚染のリスクが明らかになり、現在では厳しく規制されています。

◇PCBとは

PCB(ポリ塩化ビフェニル)は、化学的に安定し、不燃性で絶縁性が高い特性を持つ化合物です。過去には電気機器用の絶縁油や熱交換器の熱媒体、ノンカーボン紙(複写用紙など)の溶剤として幅広く利用されていました。

また、産業界では化学的安定性が求められる場面で重宝され、工業用の潤滑剤や塗料の添加剤としても使われていました。しかし、この安定性は環境中で分解されにくいという問題を引き起こし、大気や水、土壌に長期間残留する特性が環境汚染の原因となることが後に明らかになりました。

日本では、PCBの毒性が社会問題化したことを受け、1972年に製造と輸入が禁止されました。製造と輸入が禁止されてから、使用済みPCBの処理と廃棄が法律で厳しく管理されています。

◇PCBの毒性

PCBはその化学的安定性ゆえに体内に蓄積されやすく、環境や生物に対して深刻な影響を及ぼします。特に脂肪に溶けやすい性質を持つため、生物の体内に取り込まれると脂肪組織に蓄積し、長期間体内に留まることが特徴です。

慢性的に摂取した場合には、吹出物や色素沈着といった皮膚症状、全身倦怠感、末梢神経障害、食欲不振といった多様な健康被害を引き起こすことが確認されています。日本国内では、1968年に発生したカネミ油症事件により、PCBの毒性が大きな注目を集めました。

カネミ油症事件では、食用油の製造過程で熱媒体として使用されていたPCBが混入し、それを摂取した人々に健康被害が生じました。カネミ油症事件の被害は西日本を中心に広がり、PCBの危険性が社会問題として広く認識される契機となりました。

PCBの毒性と環境汚染リスクを受け、日本ではPCB特措法に基づき、保管中のPCBやPCB含有製品の適切な処理が進められています。安全な処理を通じて環境汚染を防ぎ、人々の健康を守ることが今後も求められる課題です。

PCBを含む産業廃棄物処理の難しさ

PCB廃棄物
画像出典:株式会社 環境アシスト 公式サイト

ポリ塩化ビフェニル(PCB)は、かつて電気機器の絶縁油や熱媒体など多岐にわたる用途で使用されていましたが、その毒性と環境への影響が明らかになるにつれ、適切な処理が求められるようになりました。しかし、PCBを含む産業廃棄物の処理には多くの課題が存在します。

◇環境汚染の懸念が残る

PCBは化学的に非常に安定しており、環境中で分解されにくい特性を持っています。PCBは分解されにくいため不適切な保管や処理が行われると、環境中に長期間残留し、生態系や人間の健康に深刻な影響を及ぼす可能性が高いです。

特に、保管中のPCB使用機器が事故や災害により漏洩した場合、土壌や水質の汚染が懸念されます。さらに、企業の倒産などによりPCB廃棄物が行方不明になるケースも報告されており、PCB廃棄物は環境汚染のリスクを高める要因のひとつです。

◇日本における対策

日本では、PCBの適切な処理を推進するため、2001年に「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」(PCB特措法)が制定されました。PCB特措法に基づき、国は中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)を活用し、全国5箇所に処理施設を整備しました。

全国の処理施設では、高濃度PCB廃棄物の処理が行われています。また、低濃度PCB廃棄物については、環境大臣が認定する無害化処理認定施設や都道府県知事等が許可する施設で処理が進められています

しかし、これらの処理施設の立地には地元住民の理解と協力が必要であり、施設の設置や運営に際しては慎重な対応が求められます。また、処理技術の進歩に伴い、化学的な分解方法や高温焼却など、さまざまな処理方法が開発されていますが、それぞれの方法には技術的な課題やコストの問題が存在します。

さらに、保管中のPCB廃棄物の管理や、未処理のまま残されている廃棄物の把握も重要な課題です。PCBを含む産業廃棄物の適切な処理は、環境保全と人々の健康を守るために不可欠です。

主なPCBの処理方法と処理技術

ポリ塩化ビフェニル(PCB)は、化学的に安定しており環境中で分解されにくい特性を持つため、適切な処理が求められる有害物質です。PCBの処理には、さまざまな技術が開発されており、主な処理方法は3つあります。

◇脱塩素化分解

脱塩素化分解は、PCBの分子構造から塩素を取り除き、無害な化合物に変換する方法です。この処理では、薬剤を用いてPCBの塩素原子を水素や他の原子に置き換える化学反応が行われます。特にアルカリ金属や反応性金属を使用する技術が一般的です。

脱塩素化分解の利点は、比較的低温で処理が可能なためエネルギーコストを抑えられる点にあります。また、処理後の生成物は環境への影響が少ないため、安全性の高い処理技術として評価されています。

◇水熱酸化分解

水熱酸化分解は、高温高圧の水中でPCBを酸化分解する技術です。水熱酸化分解では、臨界水(374℃以上、22.1MPa以上)を利用してPCBを炭酸ガスや水などの無害な物質に分解します。

水熱酸化分解の特徴は、酸化剤を併用することで反応効率を高められる点と、反応過程で二次廃棄物がほとんど発生しない点です。

また、密閉システムで行われるため、処理中に有害物質が外部に漏れるリスクが極めて低いこともメリットです。水熱酸化分解技術は特に、PCBを含む液状廃棄物の処理に適しています。

◇還元熱化学分解

還元熱化学分解は、高温でPCBを加熱し、還元反応を利用して分解する方法です。反応中に水素や炭化水素ガスなどの還元性ガスを用いることで、PCBを分解し無害化します。還元熱化学分解の特徴は、固体廃棄物にも適用できるため汎用性が高いことです。

また、高温で迅速に分解が進むため、大量のPCB廃棄物を効率的に処理することが可能です。一方で、処理装置の運用には高度な技術が必要であり、エネルギーコストが高い点が課題となる場合もあります。

今後も続く低濃度PCB廃棄物の処理

低濃度PCB廃棄物の適切な処理は、環境保全と公衆衛生の観点から重要な課題です。北九州市は、低濃度PCB廃棄物の処理問題に対して積極的な取り組みを行ってきました。

◇北九州市の事例

北九州市では、2004年に全国初のPCB廃棄物処理施設が稼働を開始し、岡山以西17県のPCB廃棄物の処理を担当してきました。

PCB廃棄物処理施設の稼働後、処理対象量の増加に伴い、2014年には処理の拡大と期限延長が決定され、2019年3月末には変圧器やコンデンサーの処理を全国で初めて完了しました。

しかし、安定器や汚染物等の処理は、対象量の増加により期限内での完了が困難となり、2022年4月には2年間の処理事業継続が決定されました。

◇安全確実な処理を目指して

低濃度PCB廃棄物の安全かつ確実な無害化を進めるため、環境省は「低濃度PCB廃棄物の処理に関するガイドライン-焼却処理編-」を策定し、焼却処理に係る基準や情報公開の方法などを具体的に示しています。
また、処理施設の設置や運営に際しては、地域住民の理解と協力が不可欠であり、地域住民への適切な情報提供とコミュニケーションが必要です。

今後も、低濃度PCB廃棄物の適切な処理を進めるためには、技術の進歩や法制度の整備、そして社会全体の理解と協力が重要です。


ポリ塩化ビフェニル(PCB)は、不燃性や絶縁性に優れた化学物質で、その高い安定性からかつては電気機器や産業機器の絶縁油、熱交換器、さらにはノンカーボン紙など、さまざまな工業用途で広く使用されていました。

これらの用途では、その化学的特性が大いに重宝されましたが、後にPCBが環境中で分解されにくく、また人体や動植物に対して高い毒性を持つことが判明しました。そのため、環境汚染や健康への深刻な影響が懸念され、現在ではPCBの製造と輸入が厳格に規制されることとなりました。

PCBは化学的に非常に安定しており、自然環境ではほとんど分解されることがありません。このため、PCBは土壌や水、空気に長期間残留し、生態系や人間の健康に多大な悪影響を与える可能性があります。

特にその脂肪に溶けやすい性質が、生物の体内に蓄積し、長期間にわたり健康被害を引き起こす要因となります。この問題は日本でも深刻で、1972年にはPCBの製造と輸入が全面的に禁止され、同時に使用済みPCBの適切な処理が法律で義務づけられました。

PCB廃棄物の処理には高度な技術が求められ、特に高濃度PCB廃棄物に関しては、専用の施設での厳重な管理が必要です。低濃度PCB廃棄物についても、さまざまな処理技術が開発されているものの、それぞれに技術的な課題や高いコストが伴います。さらに、これらの処理施設が設置される地域では、住民の理解と協力が不可欠です。

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